マザコン夫と離婚は可能? 離婚を切り出す前に確認しておくべきこと
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和歌山県の人口動態統計によると、令和2年における和歌山県内の離婚件数は1529組で、前年から66組減少する結果となりました。
離婚に至る原因は夫婦によりさまざまですが、ひどく母親に固執しているようなマザコン夫と一緒に暮らし続けることは、妻側にとって耐え難いケースがあります。マザコン夫との離婚を考え始めたら、協議離婚または調停離婚を目指しましょう。もし夫から離婚の同意が得られない場合は、他の離婚原因が必要となりますので、弁護士にご相談ください。
今回は、夫のマザコンを理由とする離婚の可否や、マザコン夫と離婚する際の手続き、注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。
1、夫のマザコンを理由に離婚できる?
マザコン夫と一緒に暮らすのが苦痛で離婚を検討している、という方も少なくないでしょう。協議離婚や調停離婚は理由を問わず離婚が可能である一方で、裁判離婚だとマザコンだけの理由では離婚が認められないため、注意が必要です。
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(1)マザコンとは?
「マザコン(マザーコンプレックス)」とは、母親に対して強い愛着・執着を持っている状態をいいます。
母親を愛するのは一般に良いことですが、マザコンはその域を超えて母親に依存している状態です。
たとえば、何をするにも母親の意見をきく、あまりにも頻繁に母親へ会いに行く、配偶者よりも常に母親を優先するといった傾向が見られます。
「マザコンは妻側の努力で改善されるのではないか」と考えている方もいらっしゃいます。
青年期のマザコンは、人格的成長に伴って改善されることもあるでしょう。これに対して、中高年になってからもマザコンが続く場合、改善の見込みは薄いと考えられます。 -
(2)協議離婚・調停離婚は理由を問わず可能
マザコン夫と離婚したい場合、まずは協議離婚または調停離婚を目指しましょう。
協議離婚は、夫婦間の話し合いによって離婚を成立させる手続きです。
調停離婚も家庭裁判所の調停委員が間に入って調整するものの、協議離婚と同様に、夫婦間の合意によって離婚を成立させる手続きとなります。
協議離婚と調停離婚は夫婦間の合意に基づくため、理由は問われません。
したがって、夫のマザコン的性質に嫌気が差した場合にも、夫の同意が得られれば、協議離婚または調停離婚を成立させることが可能です。 -
(3)同意が得られなければ裁判離婚|マザコンだけでは難しい
マザコン夫が協議離婚や調停離婚で同意しない場合は、離婚訴訟(離婚裁判)を通じた離婚を目指すほかありません。
しかし離婚訴訟において、離婚を認める判決が言い渡されるのは、法定離婚事由が存在する場合に限られます(民法第770条第1項各号)。
この点、夫がマザコンであるというだけでは、法定離婚事由に該当しない可能性が高いです。そのため、マザコン夫が離婚してくれない場合には、離婚裁判でマザコン以外の法定離婚事由を主張する必要があります。
2、裁判で離婚が認められるための要件
離婚を認める判決を得るために必要な法定離婚事由は、以下の5種類です。マザコン夫との裁判離婚を目指すに当たっては、いずれかの法定離婚事由の存在を主張・立証しなければなりません。
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(1)不貞行為
配偶者以外の者と性交渉を持つ「不貞行為」は、法定離婚事由とされています(民法第770条第1項第1号)。
夫婦は互いに貞操義務を負っており、配偶者以外の者と性交渉を持つことは夫婦関係を破綻させるとの考え方が、不貞行為を法定離婚事由とすることの根拠です。 -
(2)悪意の遺棄
正当な理由なく夫婦の同居義務または協力扶助義務を履行しない「悪意の遺棄」も、法定離婚事由のひとつです(民法第770条第1項第2号)。
たとえば、以下のような行為が悪意の遺棄に当たります。- 配偶者に対して、暴力やモラハラ的な言動を行うなどして、家から追い出す
- 資産や収入に応じた生活費を負担しようとしない
- 正当な理由なく配偶者に無断で別居する
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(3)3年以上の生死不明
夫婦いずれかの生死が3年以上明らかでない場合も、離婚が認められる要件です(民法第770条第1項第3号)。
配偶者が帰って来る可能性が低いのに、いつまでも婚姻関係に縛り付けるのは適切でないため、3年以上の生死不明が法定離婚事由とされています。 -
(4)回復の見込みがない強度の精神病
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないことも法定離婚事由に該当します(民法第770条第1項第4号)。
いくら夫婦とはいっても、強度の精神病にかかった配偶者の面倒を一生見なければならないのは酷であるということが、法定離婚事由とされている理由です。 -
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由
上記4つのほか、夫婦関係を続けていくことを困難にする重大な事由がある場合には、法定離婚事由として認められます(民法第770条第1項第5号)。
婚姻を継続し難い重大な事由の有無は、婚姻関係に関する一切の事情を考慮して判断されます。
たとえばDVやモラハラ、夫婦間でのしつこい宗教勧誘、長期間の別居などの事情があれば、婚姻を継続し難い重大な事由として認められる可能性が高いです。
3、離婚時には離婚条件の話し合いが必須
マザコン夫と離婚する際には、以下に挙げるような離婚条件について、夫婦間で話し合ったうえで取り決めておく必要があります。
- 財産分与(年金分割を含む)
- 慰謝料
- 婚姻費用
- 親権
- 養育費
- 面会交流の方法
マザコン夫と離婚条件の協議を行う場合、義母が口出しをしてくるかもしれません。
離婚条件はあくまで夫婦同士で決めるべき事柄ですが、義母の意向に沿わない内容では、マザコン夫が首を縦に振らない可能性が高いでしょう。
離婚条件に関する交渉をスムーズに進めたい場合には、弁護士への依頼をおすすめいたします。
4、マザコン夫と離婚する際の4つのチェックポイント
マザコン夫とスムーズかつ納得のいく条件で離婚するには、以下の4つのチェックポイントにご留意ください。
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(1)離婚を拒否されている場合は別居を検討する
マザコン夫が離婚を拒否している場合には、裁判離婚を目指すしかありません。しかし前述のとおり、法定離婚事由が存在しない場合、そのままでは離婚を認める判決を得ることは不可能です。
もし全く法定離婚事由が見当たらない場合には、マザコン夫と別居することを検討しましょう。別居状態が長く続けば、夫婦関係が修復困難であることを悟ったマザコン夫が、離婚を受け入れるかもしれません。
また、別居期間が5年から10年程度に及んだ場合、法定離婚事由のひとつである「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる可能性もあります。
ただし、正当な理由なくマザコン夫に無断で別居した場合は「悪意の遺棄」に当たり、裁判を通じた離婚請求が認められなくなるおそれがある点にご注意ください。 -
(2)財産を徹底的に調査する
離婚条件の中でも、多額の金銭の移動を伴い得るのが財産分与です。
財産分与の方法は、原則として夫婦が話し合って決めますが、話し合いがまとまらない場合は離婚訴訟で決定します。
家庭裁判所は、夫婦が婚姻中に取得した財産の総額をベースとして、財産分与の金額や内容について判断を行います。
その際、マザコン夫が母親にお金を渡すなどして財産を隠していると、財産分与でご自身の得られる分が不当に減ってしまうことになりかねません。
そのため、マザコン夫の収入や財産を徹底的に調査して、可能な限り証拠資料を集めておきましょう。 -
(3)モラハラやDV、不貞行為などの証拠を集める
マザコン夫からモラハラやDVを受けている場合や不貞行為があった場合、法定離婚事由として裁判離婚を請求できる可能性が高いといえます。それだけでなく、マザコン夫に対する離婚慰謝料請求を行うことも可能です。
また、義母から暴言を受けている場合にも、その程度が甚だしければ、法定離婚事由のひとつである「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められる可能性があります。
これらの行為についての証拠がそろっていれば、離婚に関する手続きを有利に進められるでしょう。録音・映像・メッセージなどを保存し、できる限りの証拠を確保しておくことをおすすめいたします。 -
(4)離婚問題は弁護士に依頼するのが安心
マザコン夫と離婚したい場合には、弁護士に離婚手続きの対応を依頼することが推奨されます。
弁護士は、マザコン夫との離婚協議や、離婚調停・離婚訴訟などの法的手続きを一括して代行することが可能です。
また、夫婦関係の状況やマザコン夫側の主張内容、依頼者の希望する離婚条件などを踏まえて、よりよい解決を実現できるようにサポートするだけでなく、マザコン夫が離婚を拒否している場合にも、裁判離婚を認めてもらうために、さまざまな観点から法的検討を行います。
配偶者との離婚に関するお悩みは、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
マザコン夫と離婚したい場合、基本的には夫側の同意を得て、協議離婚または調停離婚を目指しましょう。離婚を拒否された場合は裁判離婚を目指すほかありませんが、その場合、マザコンは離婚理由として認められないのでご注意ください。
ベリーベスト法律事務所は、離婚に関する法律相談を随時受け付けております。
マザコン夫との離婚を決意しているけれど、トラブルや困っていることがあるという方は、ベリーベスト法律事務所の弁護士までご相談ください。
無事に解決できるまで、全力でサポートいたします。
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