正社員は何日まで欠勤できる? 欠勤控除の計算方法

2025年04月09日
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正社員は何日まで欠勤できる? 欠勤控除の計算方法

和歌山県庁は、令和5年より「時間消費削減宣言」をして、働き方改革に着手しているそうです。17時以降は業務指示を原則禁止する、時差勤務制度を採り入れるなど、柔軟で効率的な働き方を実践、推奨しています。

職場の環境が改善することで、従業員の定着に期待できるほか、業務の効率化も期待できるでしょう。一方で、職場環境を改善しても、欠勤を繰り返すような従業員もいます。このような社員がいると、業務はもちろんのこと会社の士気にも影響するので、適切な対応を取る必要があります。

今回は、欠勤にまつわる給与計算の方法や欠勤が多い従業員への対応などについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。

1、欠勤日数に制限はあるのか

まず、欠勤日数に上限があるのか、そして欠勤が多い従業員に会社はどのように対応すれば良いかを解説します。

  1. (1)欠勤日数の上限

    結論として、法律上、欠勤日数の制限はありません

    しかし、従業員は法律上の制限がないからといって何度でも欠勤できるかというと、そうではありません。欠勤日数について法律上の上限は決められていないだけであって、欠勤に対して会社も対応できることがあります。

  2. (2)欠勤に対する会社の対応手段

    会社は従業員に支払う給与について、欠勤分を控除して算出することができます。
    給与はノーワークノーペイが原則です。つまり労働への対価が給与である以上、労働を行わなかった欠勤分について、会社は原則として給与を支払う義務がありません。

    また、欠勤は従業員が会社との雇用契約によって課される労働提供義務に違反する行為であり、債務不履行です。したがって、一定の条件のもと普通解雇の対象にもなりえます。
    さらに、会社の就業規則に違反したり職場秩序を乱したりするといった事情があれば、懲戒解雇の理由になる可能性もあるでしょう。

    ただし、欠勤の頻度や連絡の有無、欠勤の理由など、背景はさまざまあるので、すべてのケースを同様に扱うことはできません。解雇ではなく、まずは休職をしてもらうことが適切なケースもあるでしょう。
    個別事案ごとに、どのように対応するか判断することが大切です。

2、欠勤控除の計算方法

従業員が欠勤した場合について、どのように給与を算定したら良いでしょうか。
給与から欠勤分を控除するための算定方法はいくつかありますが、ここでは代表的な2つの算定方法をご紹介します。

  1. (1)欠勤控除の算定方法・1

    ①月平均の所定労働日数から、②日給を計算し、③その欠勤日数に応じて控除する方法です。

    1. ① 年間の所定労働日数を12(か月)で割って、月平均の所定労働日数を求めます。
    2. ② 月給額をその月平均の所定労働日数で割ることで日給が算出されます。
    3. ③ その日給を欠勤日数にかけ合わせれば、欠勤控除額が計算できます。


    この計算方法では、1日当たりの欠勤額は一律になり、計算も簡単なため、多くの企業で採用されています。
    留意点は、月平均の所定労働日数が仮に19日だったとして、問題となった月の所定労働日数が20日だった場合には、1日出勤しても給与がゼロと計算されてしまうことです。

  2. (2)欠勤控除の算定方法・2

    月給額をその月の所定労働日数で割って1日当たりの日給を算定し、そこに欠勤日数をかけて欠勤控除額を計算する方法です。

    この計算方法では、1日当たりの日給が月によって変わるため計算は煩雑になる一方で、ひとつ目の算定方法にあったような給与がゼロと計算されてしまう不都合はでてきません。

3、欠勤が多い場合の対応

欠勤が継続する場合には、休職や解雇の検討をすることになるでしょう。具体的な対応方法について解説します。

  1. (1)初期対応

    【欠勤の理由についてヒアリング】
    まず、欠勤の理由について明らかにする必要があります。
    理由は、さまざまあると考えられるので、初期の段階では慎重にヒアリングするべきでしょう。

    • パワハラなど職場に違法行為がある
    • 業務過多など、業務に伴う体調不良や疾病、傷病
    • その他家族の看護など、プライベートな理由
    など


    いずれにしても従業員と面談を行い、その理由を確認したうえで、ヒアリングしたことを記録に残しておくことが重要です。

    【調査】
    次に、ヒアリング・面談によって確認された理由が事実であるか、調査を行います。
    調査よって、就業規則に違反する副業や、体調不良が欠勤理由であったにもかかわらず遊んでいたなどの事実が判明することがあります。また、社内におけるパワハラなどが明るみにでることもあるでしょう。

    調査結果によって、会社として、どのような対応を取るべきかを検討していくことになります。

  2. (2)休職命令

    欠勤が継続していた理由がうつ病などを含む疾病であった場合や、会社ではサポートが難しいプライベートな問題だった場合には、解雇ではなく、休職を命じる方法があります。

    ただし、休職を命じるためには、あらかじめ要件を就業規則や雇用契約書に明確に定めておく必要があります。
    たとえば、「欠勤が連続して1か月」と定めた場合には、従業員が出勤と欠勤を繰り返すようなケースに対応できません。そのため、「3か月以内に欠勤が通算して30日に達した場合」などを休職命令の条件として定める方法が有効でしょう。

  3. (3)解雇

    欠勤の理由が虚偽であった場合や、注意・指導を行っているにもかかわらず欠勤を繰り返すような場合には、解雇を検討することになります。
    ただし、解雇が認められるためには、解雇権濫用法理などの制限があるため、慎重に対応しなければなりません。

    経過的な対応として、まずは本人と面談し、虚偽の欠勤の申請を行わないことや、今後体調不良などを原因として欠勤する場合には、医師の診断書の提出など欠勤の理由を客観的に証明できる書類の提出を求めるよう指導することは有効です。
    その際に、後日そのような注意・指導を受けていないなどと言われないように、書面に残して本人にも署名させることをおすすめします。

    欠勤を理由とした解雇の有効性が争われた裁判例では、会社が注意・指導を行ってきたのかも重要視されているためです。

    このように何度も注意・指導を行ったとしても欠勤を繰り返し、必要な書類などの提出も行わないようなケースでは、解雇が認められる場合もあります。

4、従業員の労務問題は弁護士へ相談を

ここまで解説したとおり、従業員の欠勤については、欠勤控除の計算、欠勤が継続する場合の対処など、専門的な経験や知識が必要になる場面が多くあります。

給与計算では、事案に応じた適切な算定方法を採らなくてはなりません。
また、欠勤が継続する場合の対応については、休職、解雇に至るまでの慎重な進め方が必要なうえ、万が一、会社側にパワハラなどの問題があった場合は、それらの対応も行う必要が生じます。

このように、欠勤を発端とする労働問題の対応には、法律の専門的な経験や知識が必要になる場面が多くあります。対応を誤ると、会社が不利益を被ることもあり得るため、不安を感じたら早期に弁護士に相談することを、おすすめいたします

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5、まとめ

欠勤が続く従業員への対応は多くの法的な問題が絡みます。
給与計算の方法、休職や解雇の検討のほか、調査過程において会社側の労働災害やパワハラが発覚することもあります。
また、解雇を検討している場合は、紛争のリスクがあるため、早い段階から弁護士に相談したほうが良いでしょう

ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスには、従業員の労働トラブルなど、企業法務の対応経験が豊富な弁護士が在籍しています。お困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

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