別居調停とは? メリット・デメリットや手続きの流れを弁護士が解説
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和歌山県が公表する「令和5年 和歌山県の人口動態統計(確定数)の概況」によると、令和5年の和歌山県における離婚件数は1466組でした。
夫婦関係が悪化したら利用する調停というと「離婚調停」をイメージする方も多いでしょう。しかし、調停手続きには「離婚調停」のほかに「別居調停」と呼ばれる手続きもあります。夫婦の状況に応じて、どちらか適切な方法を選択することが大切です。ただし、別居調停にはメリットだけではなく、デメリットも存在するため、調停の仕組みや流れもよく理解したうえで利用すべきでしょう。
今回は、別居調停の概要や利用するメリット・デメリット、手続きの流れについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。


1、別居調停とは?
別居調停とは、「当分の間別居する」という内容で成立する夫婦間の手続きです。
夫婦関係が悪化したとき際、利用できる調停には「夫婦関係調整調停(離婚)」と、「夫婦関係調整調停(円満)」の2種類があります。いわゆる、離婚調停と円満調停です。
これらの調停を申し立てた結果、「当分の間別居する」という内容で調停が成立することがあります。このように成立した調停を、一般的に「別居調停」と呼びます。
つまり、「別居調停」という名称の調停があるわけではなく、結果として別居を内容として成立した調停のことを別居調停と呼んでいるのです。別居調停では、主に同居を継続することが困難な夫婦が、婚姻費用の分担などについての話し合いを行います。
2、別居調停のメリット・デメリット
別居調停には、以下のようなメリット・デメリットがあります。別居調停を検討中の方は、よく確認しましょう。
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(1)別居調停のメリット
まずは別居調停の手続きをするメリットを3つ紹介します。
① 当分の間の別居を取り決めることができる
夫婦関係が悪化していては、一緒に生活するだけでも苦痛を感じる方もいるでしょう。しかし、配偶者と離れたいからといって勝手に別居をすると、法定離婚事由の「悪意の遺棄」にあたり、相手から慰謝料を請求されるリスクがあります。
その点、別居調停であれば、夫婦の合意により当分の間の別居が可能です。そのため、リスクを回避しながら別居したい方にとってはメリットでしょう。
また、夫婦間の話し合いをしたものの、別居の合意に至らなかったケースでも、別居調停を検討できます。別居調停は、調停委員という第三者が話し合いに関与するため、別居に応じるよう、配偶者を説得できる可能性が高まるでしょう。
② 別居期間中の婚姻費用の分担を取り決めることができる
収入がない、または少ない方は、別居後の生活費が不安で別居に踏み切れないこともあるかもしれません。
別居調停は、別居の内容を成立させるだけでなく、別居中の婚姻費用の分担を取り決めることもできます。婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要となる費用です。具体的には、衣食住に必要な費用、医療費、教育費などが含まれます。
別居調停で婚姻費用について取り決めができれば、別居期間が長くなったとしても、その間の生活費を心配する必要が少なくなるでしょう。
なお、婚姻費用の金額の相場は、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」で簡単に確認可能です。ご自身のケースでは、配偶者からどのくらいの婚姻費用がもらえるのか確認してみるとよいでしょう。
③ 熟慮期間を経て関係が修復される可能性もある
同居をしていると、どうしても感情的な対立が生じやすく、冷静な話し合いが困難なこともあるかもしれません。
しかし、別居調停により、当面の間配偶者と別居ができれば、お互いの関係を冷静に見つめ直すきっかけになることもあるでしょう。別居期間中の配偶者の態度を通じ、よい部分に気付くなどして、結果として関係の修復につながる可能性もあります。
まだ離婚するかどうか迷っているときは、別居調停により、一度相手と距離を置いてみるのもよいかもしれません。 -
(2)別居調停のデメリット
別居調停には、メリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。デメリットも理解したうえで、手続きを検討しましょう。
① 調停が不成立となる可能性がある
別居調停を成立させるには、夫婦双方の合意が必要です。一方が別居を希望していても、他方が別居に応じず合意が得られなければ、別居調停は不成立になってしまいます。
つまり、調停を申し立てれば、必ず別居調停を成立させられるということではない点に注意が必要です。
② 後日離婚で争いたい際は、再度調停を行う可能性がある
離婚についての争いには、「調停前置主義」が適用されます。そのため、夫婦の話し合いによる協議離婚がうまくいかないなどして離婚裁判を起こしたい場合も、先に離婚調停を行わなければなりません。
別居調停は調停として成立するため、後日離婚裁判を起こしたい場合には、すでに成立した別居調停が調停前置主義を満たしているかどうかが問題になることがあります。裁判所によっては、別居調停の成立をもって調停前置主義を満たしたと判断し、離婚裁判の訴訟提起を認めることもあります。一方、別居調停のみでは調停前置主義を満たしたと認められず、再度調停の申し立てが必要になるケースもあります。
そのため、今後離婚で争うために離婚裁判を提起する可能性があるなら、別居調停ではなく、離婚調停を行うほうがよいかもしれません。
③ 別居調停の成立後すぐには離婚請求が難しくなる
別居調停が成立したのち「やっぱり離婚をしたい」と考え直した場合、夫婦双方の合意があれば協議離婚が可能です。しかし、合意できなかった場合は、改めて調停に進むことになります。ただし、別居調停が成立した直後では離婚調停を行うことは難しいでしょう。
離婚調停の申し立てができないわけではありませんが、「当分の間別居するという内容で成立したのだから、しばらく様子を見るべき」といった方向で、話し合いが進められてしまう可能性があります。
別居したものの、すぐ離婚を考える可能性がある方は、別居調停の手続きについてより慎重に検討しましょう。
3、別居調停の手続きの流れ
別居調停を希望する場合には、以下のような流れで手続きを進めます。
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(1)調停の申し立て
先述のとおり、別居調停という名称の調停があるわけではありません。「当分の間別居する」という内容の調停を希望する場合には、「夫婦関係調整調停(離婚)」または「夫婦関係調整調停(円満)」のいずれかの申し立てをします。
調停の申し立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で行わなければなりません。しかし、当事者間の合意がある場合には、合意した家庭裁判所で調停を行うこともできます。
なお、調停の申し立てにあたっては、以下の書類および費用が必要になります。書類
- 申立書
- 事情説明書
- 連絡先等の届出書
- 進行に関する照会回答書
- 夫婦の戸籍謄本(全部施行証明書)
- 年金分割のための情報通知書(年金分割を行う場合)
費用
- 収入印紙1200円分
- 連絡用の郵便切手(金額については裁判所に確認)
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(2)調停期日
当事者は、指定された日時に裁判所に出向いて、調停期日を行います。
調停では、家庭裁判所の調停委員が公正・中立な立場で双方の話を聞き、話し合いを進めていくことになります。当事者は、調停委員から交互に話を聞かれることが基本で、配偶者と直接顔を合わせる心配はありません。
配偶者との別居を希望する場合には、調停委員に対してその旨を説明し、別居調停の成立を目指していきましょう。
なお、初回の調停期日で話し合いがまとまらなければ、次回期日が指定され、次回期日でも同様に話し合いが進められる流れです。 -
(3)調停の成立・不成立
最終的に当事者双方が「当分の間別居する」という内容で合意すれば、別居調停は成立となります。一方、別居についての合意が得られなければ、調停不成立となり、調停手続きは終了します。
4、別居調停や離婚を弁護士に相談するメリット
別居調停や離婚をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談するメリットを3つ紹介しましょう。
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(1)法律的な観点から有利なポイントを整理できる
離婚を考えている場合には、親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流など、離婚に際しての取り決めについても想定しておくべきです。
弁護士であれば、具体的な事案に応じて、有利な条件で離婚するためのポイントを整理できます。そのため、離婚の見通しや今後の対応が明確になるでしょう。 -
(2)証拠の収集や申立書の作成などの準備がスムーズにできる
有利な条件で離婚するためには、自分の主張を裏付ける証拠が必要です。特に、財産分与や養育費などで有利な条件を得るためには、必要な主張・立証を行う必要があり、そのためには、十分な証拠を確保しておくべきでしょう。
弁護士は、証拠収集についてのアドバイスを提案できるので、適切な証拠を集められる可能性が高まります。また、弁護士であれば、離婚調停の申立書作成などの手続きをすべて代行できるため、調停に向けた準備をスムーズに進められるでしょう。 -
(3)調停中に不当な要求があっても、その場で対応できる
弁護士は、離婚調停に同席可能です。調停中に予想外の事情が生じたり、配偶者から不当な要求があったりした場合でも、その場ですぐに適切な対応をとることができます。
自分ひとりで対応すると、判断を間違えて不利な条件を受け入れてしまうリスクがあるため、専門家である弁護士に依頼すると安心です。
お問い合わせください。
5、まとめ
配偶者が離婚に応じないときや、今すぐ離婚すべきか判断できない場合は、調停を不成立にして離婚裁判に進むのではなく、「当分の間別居する」という内容の別居調停を成立させるのもひとつの方法です。
ただし、別居調停を成立させると、しばらくは離婚したくても離婚請求が難しくなるなどのデメリットもあります。別居調停を検討中の方は、あらかじめ弁護士に相談するか、弁護士に調停期日の対応を任せるべきでしょう。
離婚についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスまでご相談ください。
お問い合わせください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています