健康保険料を滞納するとどうなる? 支払えないときの対処法
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和歌山市役所が公表する「令和4年版統計資料」によると、令和3年度で和歌山市の国民健康保険の被保険者は7万5806人でした。
国民健康保険料は、会社員や公務員の方が加入する健康保険の保険料と異なり、自治体などから届く納付書に従って自分で納めなければなりません。
国民健康保険料の支払いを滞納すると、最終的には滞納処分が行われ、財産を差し押さえられてしまいます。そうなる前に、自治体などに減額・猶予や分納の相談をしたり、他の借金を債務整理したりして、国民健康保険料の滞納解消を図りましょう。
本コラムでは、国民健康保険料の支払いを滞納するとどうなるのか、また滞納してしまったときの対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。
1、国民健康保険料を滞納するとどうなる?
国民健康保険料を滞納すると、どのような事態になるのかを最初に解説していきます。
特に督促状が送られてきた場合、間もなく滞納処分が行われる合図です。財産を失ってしまう前に、滞納状態を解消するための対応を行いましょう。
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(1)延滞金が発生する
国民健康保険料を滞納すると、納期限の翌日から納付日までの日数に応じた延滞金が発生します。
延滞金の利率は、保険者(市区村・組合)ごとに異なる点にご注意ください。なお、和歌山市の国民健康保険について、延滞金の利率は以下のとおりです(令和4年1月1日以降)。- 納期限の翌日から3か月以内:年2.4%
- 納期限の翌日から3か月経過後:年8.7%
参考:「督促・延滞金・滞納処分・収納業務の委託 延滞金について」(和歌山市)
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(2)督促状が発送される
国民健康保険料の滞納者になると、保険者(市区村・組合)から督促状が送られてきます(国民健康保険法第79条第1項・第2項、地方税法第329条)。
督促状には、未納となった国民健康保険料の再納付期限が記載されています。督促状の発送日から少なくとも10日間は猶予がありますが、再納付期限を経過するといつでも滞納処分が行われる可能性があるので注意が必要です。 -
(3)保険給付が停止される
国民健康保険料を滞納して1年未満の場合は、通常の保険証に代えて短期被保険者証が交付されます。滞納が計1年以上に及んだ場合は、短期被保険者証に代えて被保険者資格証明書が交付されます。
資格証明書を提示するだけでは、医療機関において保険料金による診療を受けることはできません。そのため、窓口で医療費全額を支払う必要が生じてしまいます。保険適用分の払い戻しを受けるためには、後日保険者の窓口で手続きを行わなければなりません。また、払戻金は滞納金と相殺されます。
さらに、国民健康保険料を1年6か月以上滞納した場合は、保険給付が差し止められます。 -
(4)滞納処分により財産を差し押さえられる
督促状で指定された再納付期限までに滞納金を完納しない場合は、保険者による滞納処分が行われ、被保険者の財産が差し押さえられます(国民健康保険法第79条の2・第80条、地方税法第331条)。
滞納処分は予告なく行われるため、いつ財産が差し押さえられるかはわかりません。預貯金や給与債権などを差し押さえられると生活の困窮に直結するため、そうなる前に滞納状態の解消に努めましょう。
2、国民健康保険料の消滅時効
国民健康保険料の徴収権は、納期限の翌日から起算して2年間で時効消滅します(国民健康保険法第110条第1項)。
市町村によっては、国民健康保険の被保険者である世帯主に対して、国民健康保険税を課している場合があります(地方税法第703条の4)。
国民健康保険税の徴収権の時効期間は、納期限の翌日から起算して5年間です(同法第18条第1項)。
ただし、保険者によって徴収(納付)の告知または督促が行われた場合には、時効の更新の効力が生じ、時効期間がリセットされます(国民健康保険法第110条第2項、地方税法第18条の2第1項)。
基本的には、時効完成前に徴収(納付)の告知や督促が行われるため、国民健康保険料(税)の時効完成は期待できません。そのため、早めに滞納状態を解消することをおすすめいたします。
3、国民健康保険料が支払えない場合の対処法
国民健康保険料が支払えない場合は、以下の方法によって対処することが考えられます。滞納状態が深刻化する前に、保険者(市町村・組合)の窓口や弁護士にご相談ください。
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(1)減免・猶予を申請する
一定の要件を満たす場合には、国民健康保険料の減免または納付猶予が認められます。
<減免が認められる場合の例>- 災害等によって居住家屋が損壊した場合
- 雇用保険の特定受給資格者、特定理由離職者として失業等給付を受ける場合
- 倒産、解雇などにより、年間所得が前年より半分以上減少した場合
<猶予が認められる場合の例>- 天災、事業の休廃止、失業等により、収入が著しく減少したため生活が困難となった場合
参考:「国民健康保険料の減免について」(和歌山市)、「国民健康保険一部負担金の免除及び徴収猶予制度について」(和歌山市)
保険者(市町村・組合)のウェブサイトや窓口で要件を確認した上で、該当している方は国民健康保険料の減免・猶予を申請しましょう。 -
(2)分納について相談する
どうしても国民健康保険料を納付できない事情がある場合、保険者(市町村・組合)の窓口に相談すれば、分納などを認めてもらえることがあります。
参考:「国民健康保険料の納付相談について」(和歌山市)
経済的に難しい状況にある方は、滞納処分によってさらに困難な状況に陥ることを避けるためにも、早めに保険者の窓口へご相談ください。 -
(3)家族などの健康保険の扶養に入る
ご自身の年間収入が130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満)で、家庭の生計を維持している方が会社員や公務員の場合には、生計維持者が加入する健康保険の扶養に入ることも考えられます。
参考:「被扶養者とは?」(全国健康保険協会)
健康保険の扶養に入れば、国民健康保険料を自ら納付する必要はなくなります。被扶養者の要件に該当する方は、国民健康保険からの切り替えをご検討ください。 -
(4)借金などを債務整理して、納付資金を確保する
借金の返済に追われているために国民健康保険料を支払えない場合は、借金について債務整理を行い、返済負担を軽減して納付資金を確保しましょう。
債務整理手続きには、主に任意整理・個人再生・自己破産の3つがあります。弁護士にご相談いただければ、手続きの選択や進め方などについてアドバイスを受けることが可能です。- 任意整理
債権者と個別に直接交渉して、利息・遅延損害金のカットや返済スケジュールの変更を認めてもらいます。 - 個人再生
裁判所の個人再生手続きを通じて、原則として債権者全員との間で、債権カットや返済スケジュールの変更を取り決めます。 - 自己破産
財産を処分して債権者に配当した後、残った債務全額が免除されます。
なお、特定の債権者に対する弁済は破産管財人による否認の対象になり得ますが(偏頗行為否認、破産法第162条)、国民健康保険料の支払いは偏頗(へんぱ)行為否認の対象になりません(同法第163条第3項)。
- 任意整理
4、国民健康保険料の滞納は、債務整理で解決できない
国民健康保険料そのものは、債務整理によって減免することはできません。任意整理・個人再生・自己破産のいずれについても、それぞれ以下の理由により、国民健康保険料の減免は認められなくなっています。
- 任意整理
国民健康保険の保険者(市町村・組合)は、減額・猶予の制度が設けられているため、保険料の任意整理に応じることはありません。 - 個人再生
国民健康保険料は一般優先債権に当たるため、個人再生による減額の対象とならず、手続き外で随時弁済する必要があります(民事再生法第122条第1項・第2項)。 - 自己破産
国民健康保険料は非免責債権にあたるため(破産法第253条第1項第1号)、破産免責が一切認められません。
しかし前述のとおり、国民健康保険料については減免・猶予の制度が設けられているほか、保険者の窓口で相談すれば分納などが認められる場合もあります。また、借金を債務整理すれば、国民健康保険料の納付資金を捻出することもできるでしょう。
国民健康保険料の債務整理ができないとしても、滞納状態を解消する道は十分残されていますので、弁護士にご相談ください。
5、まとめ
国民健康保険料を滞納すると、延滞金の発生や保険給付の停止、さらに滞納処分による財産差し押さえのリスクを負うことになります。
滞納保険料を支払えない場合には、保険者(市町村・組合)の窓口に相談しましょう。また、他に借金がある場合には、債務整理について弁護士へ相談することがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所は、債務整理に関するご相談を随時受け付けております。お客さまのご状況に合わせた最適な債務整理の方法をご提案し、実際の手続きも最初から最後までサポートいたします。
借金の返済に追われるあまり国民健康保険料を滞納してしまった方や借金でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスにご相談ください。
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