自己破産をする際にやってはいけないこととは? 自己破産の注意点
- 自己破産
- 自己破産
- やってはいけないこと
裁判所が公表している「令和3年 司法統計年報概要版(民事・行政編)」によると、令和3年度、和歌山地方裁判所に申し立てのあった破産件数は、480件でした。
借金の返済ができない状態になってしまった場合には、自己破産を検討する必要があります。借金の返済義務を免除してもらうことができる自己破産は、借金に困っている方にとって大きなメリットのある制度です。
しかし、自己破産の手続きを利用する際には、いくつかやってはいけないことがあります。今回は、自己破産をする際にやってはいけないこと、および自己破産の注意点について、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。
1、自己破産とはどのような手続き? 財産はすべて処分される?
自己破産とは、どのような手続きなのでしょうか。以下では、自己破産の概要とメリット・デメリットについて説明します。
-
(1)自己破産とは
自己破産とは、借金の返済ができない状況になった方が裁判所に申し立てをして免責を受けることにより、借金の支払い義務を免除してもらうことができる手続きです。
自己破産をすることによって、基本的にはすべての借金をゼロにすることができます。そのため、借金の返済やストレスから解放され、再出発することが可能です。 -
(2)自己破産のメリットとデメリット
自己破産には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
① 自己破産のメリット
自己破産の最大のメリットは、借金の返済義務が免除されるという点です。
他の債務整理の方法に個人再生や任意整理などがありますが、いずれも借金の返済を前提とした債務整理ですので、一定の収入や資力がなければ利用することができません。
これに対して、自己破産では、基本的にすべての借金がゼロになります。そのため、生活を立て直すうえでは、もっとも効果的な方法だといえます。
② 自己破産のデメリット
自己破産をすると、一定額以上の財産については、基本的にすべて処分をしなければなりません。自宅や車などがある場合には、基本的には手放さなければなりませんので、これらの財産を持っている方にとってはデメリットといえるでしょう。
ただし、生活に不可欠な財産(自由財産)や差押え禁止財産などについては処分を免れますので、これまでと同様の生活を送ることは可能です。
2、自己破産をする際にやってはいけないこと
自己破産をする際には、いくつかやってはいけないことがあります。以下のようなことをすると、借金の免除を受けることができない可能性もあるため、よく確認してください。
-
(1)財産隠し
自己破産の申し立てをする際には、財産目録を作成し、破産者が持っているすべての財産を記載しなければなりません。しかし、破産後の生活のために、少しでも多くの財産を残そうとして財産を隠そうと考える方もいるでしょう。
このような財産隠しは、破産法で禁止されている行為です。
財産隠しが発覚すると、裁判所による免責を受けることができなくなってしまいます。また、悪質なケースについては、詐欺破産罪として、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科されるおそれもあります。
財産隠しをしたとしても、裁判所の調査などによって明らかになってしまいますので、正直に申告することが大切です。 -
(2)自己破産前の名義変更
自宅や車などを所有している方の中には、自己破産によって処分されるのを避けるために、自己破産前に自己名義から家族名義に名義変更をしようとする方もいます。
名義変更のすべてが禁止されるわけではありませんが、自己破産前に名義変更をすると、財産隠しを疑われてしまう点に注意が必要です。
財産処分を避けるという不当な目的で名義変更をした場合には、免責不許可事由に該当し、免責を受けることができなくなる恐れがあります。 -
(3)財産の処分
自己破産前の財産処分は、そのすべてが禁止されているわけではありません。
破産申し立て費用を捻出することができない方は、自己破産前に必要な範囲で財産を売却し、破産に必要な費用を支払うということは実務でも行われています。
しかし、不当に安い値段で財産の処分が行われると、本来債権者に分配されるはずであった財産が減ってしまうなど、破産手続き上、大きな不利益が生じてしまいます。
そこで、このような不当な財産処分がなされた場合には、免責不許可事由に該当し、免責を受けることができなくなる点にも留意してください。 -
(4)新たな借り入れ
自己破産により借金の返済義務が免除されるからといって、借金の返済ができないことを知りつつ新たな借り入れをすることは、詐術による信用取引という免責不許可事由に該当し、免責を受けることができなくなる恐れがあります。
また、悪質なケースについては、詐欺罪で処罰されるおそれもありますので、注意が必要です。 -
(5)一部の債権者への返済
親しい友人やお世話になっている方など、自己破産前に優先的に返済をしたいと考える方もいるでしょう。
しかし、破産法では、債権者平等というルールがあります。
そのため、一部の債権者だけに返済をする行為は偏頗(へんぱ)弁済にあたり、免責を受けることができなくなる可能性がある点に注意してください。
また、返済を受けた債権者も、破産管財人による否認権行使によって、お金を返すよう求められてしまいます。そうすると、相手に迷惑をかけることにもなってしまうでしょう。
3、自己破産によって制限されること
自己破産をすることによって、以下のような制限が生じます。
-
(1)財産処分ができなくなる
自己破産の手続き中は、破産者の財産の管理処分権は破産管財人に移るため、破産者自身では財産の処分ができなくなります。
ただし、同時廃止の場合には、破産手続開始決定と同時に手続きが廃止されますので、財産処分への制限はありません。 -
(2)居住地の変更に許可が必要
自己破産の手続き中に引っ越しをする場合には、裁判所の許可が必要です。
許可なく引っ越しをしてしまうと、免責を受けることができなくなるおそれもあります。
ただし、同時廃止の場合には、破産手続開始決定と同時に手続きが廃止されますので、引っ越しをする際の裁判所の許可は不要です。この場合には、住所が変わった旨を事後的に報告すれば問題ありません。 -
(3)海外旅行が制限される
自己破産の手続き中に長期間居住地を離れる場合には、裁判所の許可を受ける必要があります。そのため、海外旅行に行く場合にも裁判所の許可が必要です。
海外出張などやむを得ない場合であれば許可してもらうことが可能ですが、単なる観光やレジャー目的では許可されない可能性があります。
ただし、同時廃止の場合には、破産申し立てと同時に手続きが廃止されますので、海外旅行の制限はありません。 -
(4)特定の資格や職業が制限される
自己破産手続き中は、一定の資格や職業が制限されます。
制限が及ぶ資格や職業としては、以下のものが挙げられます。- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 行政書士
- 生命保険募集人
- 警備員
- 会社役員
4、借金に関する問題を弁護士に相談するべき理由
借金問題でお困りの方は、弁護士に相談することがおすすめです。
-
(1)最適な債務整理の方法を提案できる
債務整理の方法には、自己破産以外にも任意整理、個人再生という方法もあります。
自己破産にメリットとデメリットがあるように、その他の債務整理の方法にもメリットとデメリットがありますので、ご自身の状況を踏まえて最適な債務整理の方法を選択することが大切です。
弁護士に相談をすれば、借金額や資産内容、収支状況などを踏まえて最適な債務整理の方法を提案してもらうことができます。 -
(2)債権者とのやり取りを代理できる
弁護士に依頼をすれば、債権者とのやり取りは弁護士が窓口になって対応します。
債権者からの督促におびえる心配もありませんので、精神的ストレスから解放された状況で生活の再建を行うことができるでしょう。 -
(3)複雑な手続きを一任することができる
自己破産を選択する場合には、必要書類を収集して裁判所への申し立てが必要になります。
個人の方では、これらの手続きを行うことは困難といえるため、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
弁護士に依頼をすれば、裁判所への申し立てから裁判所との対応まですべてを任せることができます。債務者本人の手続き的負担は、ほとんどないといえるでしょう。
5、まとめ
自己破産とは、借金返済義務の免除により、借金のお悩みを根本から解決することができる債務整理の方法です。
しかし、破産手続き前および破産手続き中には、一定の行動が制限され、やってはいけないこともいくつかあります。禁止されていることをしてしまうと免責不許可事由に該当し、免責を受けることができなくなってしまうおそれもありますので、慎重に行動するようにしましょう。
自己破産の手続きは、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
借金の問題でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスまで、お気軽にご相談ください。最適な方法で借金の悩みを解決できるように、心を込めてサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|