前科が付くデメリットとは? 前歴との違いや不起訴処分の獲得方法

2023年08月31日
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前科が付くデメリットとは? 前歴との違いや不起訴処分の獲得方法

和歌山県警察が公表する「和歌山県の犯罪情勢(令和4年中 確定値)」によると、令和4年に和歌山県で認知された犯罪件数は3438件で、そのうち検挙された件数は2022件でした。検挙後、逮捕を経て起訴となり有罪判決を受けた場合、前科が一定期間付くことになります。

前科が付いた場合、仕事・周囲の評判・海外渡航などに悪影響を及ぼしたり、再犯時には刑が加重されたりする可能性が高くなります。前科が付くことを避けたい場合には、犯罪を疑われた時点ですぐに弁護士へ相談しましょう。

本コラムでは、前科と前歴の違いや、前科が付くことによるデメリットなどについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。

1、前科とは?

「前科」は法律上定義された用語ではありませんが、刑罰を受けた経歴を表す言葉として広く使われています。「前歴」とは異なる点に注意が必要です。

  1. (1)前科=刑罰を受けた経歴

    前科とは、刑罰を受けた経歴を意味するのが一般的です。ただし、法律上定義された用語ではないため、その意味する範囲が常に同じとは限りません。

    もっとも広義の前科は、過去に有罪判決によって刑の言い渡しを受け、その判決が確定した事実そのものを意味します。広義の前科は、時間の経過によって刑の言い渡しの効力が失われた場合でも、事実として永久に残るものと捉えられています。なお執行猶予付きであっても、有罪判決が確定した場合には前科に該当します。

    これに対して狭義の前科は、広義の前科のうち、時間の経過によって刑の言い渡しの効力が失われていないものを意味します。

    社会生活または刑事手続きに実質的な影響を与えるのは、多くの場合において狭義の前科に限られます。そのため、単に前科という場合は、狭義の前科を指すケースが多いと考えられます。

    これ以降本記事では、狭義の前科を(原則として)単に「前科」と表記して解説します。

  2. (2)前科はいつ消えるのか?

    刑法上、以下のいずれかに該当した場合には、刑の言い渡しは効力を失います。

    • ① 刑の全部の執行猶予の言い渡しを取り消されることなく、その猶予の期間を経過したとき(刑法第27条)
    • ② 禁錮以上の刑の執行を終わり、またはその執行の免除を得た者が、罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したとき(刑法第34条の2第1項前段)
    • ③ 罰金以下の刑の執行を終わり、またはその執行の免除を得た者が、罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したとき(同項後段)


    上記の規定によって刑の言い渡しが効力を失った場合、(狭義の)前科は消えたものとして取り扱われます。たとえば、履歴書の賞罰欄に前科情報を記載する必要がなくなります。

  3. (3)前科と前歴の違い

    前科と同じく、犯罪に関連する経歴として用いられる「前歴」という言葉があります。前歴とは、検察・警察による捜査の対象となった経歴のことです。

    たとえば、以下のような経歴が前歴に当たります。なお、前科に該当する場合(=有罪判決が確定した場合)については前歴に含めないのが一般的です。

    • 警察に逮捕されたが、その後不起訴になった
    • 検察官に起訴されたが、最終的に無罪判決を受けた
    • 逮捕はされなかったものの、刑事事件の被疑者として取り調べを受けた
    など


    有罪判決が確定している前科とは異なり、前歴はあくまでも「犯罪の疑いをかけられた」ことを意味するに過ぎず、実際に罪を犯したことを必ずしも意味しません。

    そのため前歴については、前科について発生するような法律上の効果(資格の剥奪や再犯加重など)は発生しません。また、履歴書の賞罰欄にも前歴を記載することは不要です。

2、前科が付くことによるデメリット

刑事裁判で有罪判決を受けて前科が付くと、以下のようなデメリットを被ることになります。



  1. (1)仕事への悪影響

    有罪判決を受けて前科が付いた場合、仕事やキャリアについて以下の悪影響が生じる可能性があります。

    ① 懲戒処分
    就業規則違反に該当し、懲戒解雇などの懲戒処分を受ける可能性があります。

    ② 転職の難航
    履歴書の賞罰欄に前科の記載が義務付けられるため、転職活動が難航する可能性があります。前科を隠して入社した後に前科が判明した場合、解雇されることがあります。

    ③ 職業・資格の剥奪
    一部の公務員や国家資格などについては、禁錮以上の刑に処せられたことが欠格事由とされており、前科が付くと職業・資格をはく奪されます。

    ④ 取引の拒絶
    フリーランスで働く方や、自分で店舗を経営している方などは、取引先や顧客から取引・サービスの利用を拒絶される可能性があります。
  2. (2)周囲の評判への悪影響

    犯罪事実が広く報道されると、近所や親類・友人の間に知れ渡ってしまう可能性が高いです。

    有罪判決を受けて前科が付くと、周囲の人も「犯罪者」としての認識を確かなものにするでしょう。そうなると、日常生活の中で避けられる、うわさ話をされるなど不愉快な思いをする可能性があります。

  3. (3)海外渡航への悪影響

    日本国外へ渡航する際には、犯罪経歴証明書などの提出を求められることがあります。

    渡航先の方針によっては、前科のある者が入国する際にはビザ(査証)が必要となるなど、自由な海外渡航が制限される可能性があります。

  4. (4)再犯時の悪影響

    懲役刑に処せられた者が、執行終了日または執行の免除を得た日から5年以内に更なる罪を犯し、有期懲役に処せられるケースなどは「再犯」として取り扱われます(刑法第56条)。
    再犯について科される懲役刑は、法定刑の長期が2倍です(ただし、有期懲役の上限は30年。刑法第57条、第14条第2項)。

    また、禁錮以上の刑に処せられた場合、その執行終了日または執行の免除を得た日から5年以内の期間中は、執行猶予を付すことのできる場合が非常に狭く限定されます(刑法第25条)。

3、軽微な犯罪でも前科が付く可能性はある

殺人・強盗・放火などの重大な犯罪に限らず、以下のような比較的軽微な犯罪であっても、前科が付く可能性は十分にあります。



  1. (1)痴漢

    痴漢については、不同意わいせつ罪(刑法176条)や、迷惑防止条例違反・軽犯罪法違反などの犯罪が成立します。

    特に、被害者の抵抗が著しく困難な状態で痴漢をする不同意わいせつ罪は、法定刑が「6か月以上10年以下の懲役」と極めて重く設定されています。このような態様で行われる痴漢は、もはや軽微な犯罪とはいえず、逮捕・起訴されて前科が付く可能性が極めて高いです。

  2. (2)過失による交通事故

    不注意(過失)により交通事故を起こして被害者を死傷させた場合、過失運転致死傷罪によって処罰されます(自動車運転処罰法第5条)。過失運転致死傷罪の法定刑は「7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金」です。

    特に被害者が死亡した場合には、結果の重大性に鑑み、起訴されて有罪判決を受ける可能性が高いと考えられます。

  3. (3)万引き

    万引きは窃盗罪(刑法第235条)に該当し、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます。

    たとえ数百円から数千円程度の少額であっても、常習性が認められる場合などには、逮捕・起訴されて有罪判決を受ける可能性が高くなります。

  4. (4)無銭飲食

    飲食店における無銭飲食は、店員に対して何らかのだます行為がなされた場合は詐欺罪に該当します(刑法第246条第1項、第2項)。詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。

    詐欺罪に当たる無銭飲食も窃盗罪と同様に、常習性が認められる場合などには逮捕・起訴されて有罪判決を受ける可能性が高いと考えられます。

  5. (5)特殊詐欺の受け子・出し子

    振り込め詐欺などの特殊詐欺では、被害者からお金を受け取る「受け子」や、被害者が振り込んだお金を引き出す「出し子」が関与するケースがよく見られます。

    受け子や出し子は、社会的な知識の浅い若者(学生など)が、わずかな報酬を受け取って担当するケースが非常に多いです。

    したがって、受け子や出し子が主動的な役割を果たしているとはいえませんが、特殊詐欺が社会的に大きく問題視されている状況を踏まえると、逮捕・起訴されて有罪判決を受ける可能性は十分にあります。

4、前科が付くデメリットを避けたい場合は弁護士にご相談を

犯罪の疑いで捜査の対象になっても、早期に弁護士に相談することで、起訴処分や有罪判決を回避できるかもしれません。

弁護士は、被害者との示談交渉などを通じて、まず被疑者が起訴されずに済むように弁護活動を行います。比較的軽微な犯罪であれば、適切な弁護活動によって不起訴になる可能性が高まります。

もし起訴されてしまっても、犯罪について身に覚えがない場合は、弁護士が無罪主張を全面的にサポートすることが可能です。罪を認める場合でも、良い情状を説得的にアピールし、できる限り刑が軽減されるよう弁護活動を行います。

捜査機関から犯罪の疑いをかけられてしまったら、まずは弁護士へ相談することがおすすめです。

5、まとめ

刑事裁判で有罪判決を受けて前科が付くと、仕事・生活の両面において多くのデメリットが生じます。前科が付くことを避けたい場合には、早い段階で弁護士に相談することが大切です。

ベリーベスト法律事務所は、刑事事件の被疑者やそのご家族からのご相談を随時受け付けております。捜査機関から犯罪を疑われていて、前科が付くことを避けたい方は、すぐにベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスへご相談ください。

刑事事件の知見豊富な弁護士が全力でサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています