野焼きの何が違法? 通報されたらどうなる? 法律の定めとは
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野外では、家庭ごみや農業で生じた稲わら・雑草などを焼却する「野焼き」が行われることがあります。
この野焼きという行為は、近隣住民とのトラブルを生じさせたり、生活環境の悪化を招くおそれがあったりするため、原則として法律で禁止されているものです。もし違法な野焼きをしたら、目撃者から通報されたり、刑罰を科されたりするリスクもあります。
本コラムでは、野焼きの違法性と通報された場合のリスクなどについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。
1、野焼きの違法性とは
野焼きとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。野焼きのどのような行為が法律で禁止されているのかについて、解説します。
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(1)野焼きとは
野焼きとは、法律で定められた基準を満たす焼却炉を使用することなく、野外で廃棄物などを焼却する行為です。
<野焼きの廃棄物例>- 家庭ごみ
- 事業所ごみ
- 産業廃棄物
- 雑草
- 剪定(せんてい)枝
- 稲わら
法律で定められた基準を満たさない自宅の庭や畑などにあるブロックで囲んだ焼却炉やドラム缶などを使用して、上記のような廃棄物を焼却することが、いわゆる「野焼き」に該当する行為となります。
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(2)野焼きは法律または条令で禁止されている。
野焼きを行うと、大量の煙や悪臭が発生します。それにより、近隣住民に対して煙や臭いによる健康被害を生じさせたり、洗濯物や布団に臭いが付くといった生活環境の悪化を招いたりするおそれがあることに注意しましょう。
また、野焼きは、法律で定められた基準を満たした焼却炉で焼却しているわけではありません。そのため、低温焼却によるダイオキシンなどの有害物質発生により、人体への影響、大気汚染や火災を引き起こす原因となります。
これらの理由から、野焼きは廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)や条令によって、原則として禁止されています。
また、和歌山県では和歌山県公害防止条例を制定し、「屋外燃焼行為」を制限しています(和歌山県公害防止条例55条1項)。<和歌山県公害防止条例:屋外での大量燃焼が規制されているもの>- ゴム
- 硫黄
- ピッチ
- 皮革
- 合成樹脂
- 木皮
- 廃材
- 廃油
- 被覆線
2、野焼きに該当しない5つのケース
破棄物処理法では、野焼きは原則として禁止されていますが、例外的に認められているケースもあります。
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(1)国または地方公共団体が施設管理のために必要となる廃棄物の焼却
河川管理者が河川の管理を行うために伐採した草木などを焼却する行為や、湾岸管理者が湾岸の管理を行うために回収した漂着物などを焼却する行為については、廃棄物処理法の例外として認められる野焼きに該当します。
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(2)震災、風水害、火災などの災害予防、応急対策、復旧のために必要となる焼却物の焼却
災害時や災害復旧時に行う木くずなどの焼却、凍霜(とうそう)被害防止のために行う稲わらなどの焼却、火災予防訓練時に行う模擬火災などの焼却、道路管理者が道路の管理のために剪定した草木などの焼却については、廃棄物処理法の例外として認められます。
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(3)風俗習慣上または宗教上の行事に必要な焼却物の焼却
どんど焼きなどの祭事や地域行事で不要となった門松・しめ縄などの焼却、お焚き上げにおける不要なお守りや人形などの焼却、寺院において不要になった塔婆などの焼却は、破棄物処理法の例外として認められる野焼きとなります。
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(4)農業、林業、漁業を営むためにやむを得ず行われる廃棄物の焼却
農業者が害虫駆除や農地管理のために行う稲わら・農作物の残渣や刈草等の焼却、林業者が行う伐採した枝などの焼却、漁業者が行う漁網に付着した流木や海産物等の焼却については、廃棄物処理法の例外として認められる野焼きに該当します。
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(5)たき火など日常生活で通常行われる廃棄物の焼却であり軽微なもの
一般家庭で行われる木くずや木の葉などの焼却、風呂焚きや暖をとるための木くずやまきの焼却、キャンプファイヤー、バーベキューなどは、破棄物処理法の例外として認められる行為です。ただし、一般家庭から出る紙類やプラスチック、ビニール類、生ごみなどの焼却は認められていません。
3、野焼きを通報されたら逮捕? どんな罰則を受けるのか
違法な野焼きをしているところを目撃され、通報されたらどうなるのか、また、罰則などについて解説します。
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(1)野焼きによる逮捕の可能性
違法な野焼き現場を通報されると、状況確認のために警察官が駆け付けてくるでしょう。違法な野焼きであることが現場で確認された場合には、直ちに焼却の中止が求められますが、その場で逮捕される可能性は低いといえます。
捜査機関が犯人を逮捕するためには、逃亡や証拠隠滅のおそれがあることが必要になるため、違法行為があれば直ちに逮捕できるわけではありません。野焼きの現場で身分照会などに素直に応じている限りは、逮捕の可能性は低いといえるでしょう。
ただし、逮捕されないからといって処罰を受けないというわけではありません。違法な行為が確認された場合には、その後、警察による捜査が進められます。
野焼きをした本人は、警察から任意で事情を聞かれるため、後日、警察署への出頭を命じられる可能性もあります。出頭を拒否すると逮捕されるリスクが高まることから、出頭命令には素直に応じるようにしましょう。 -
(2)例外的に認められる野焼きであっても行政指導を受ける可能性がある
2章で説明したとおり、野焼きには例外的に認められる5つのケースがあります。これらのケースは違法行為ではないため、処罰を受けるおそれはありません。
しかし、例外的に認められる行為であっても、以下のような行為に該当する場合には、行政機関による行政指導の対象になります。野焼きをする際には、十分に注意しましょう。- 周辺住民から苦情があったり、生活環境に悪影響を及ぼしたりしている場合
- 頻繁に野焼きでの焼却を行っている場合
- 道路が濃煙に覆われて、交通事故などが発生する危険性がある場合
※なお、廃プラスチック、廃ビニール、廃タイヤ等の廃棄物を焼却する行為は、処罰されることになるのでご注意ください。
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(3)違法な野焼きをした場合の罰則
違法な野焼きをした場合は廃棄物処理法違反となり、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはこれらが併科されます。
法人が違法な野焼きを行った場合には、法人に対して、3億円以下の罰金が科されることになります。
4、近隣トラブルに発展している場合は弁護士に相談を
野焼きによって近隣トラブルに発展している場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)野焼きの違法性について判断してもらえる
野焼きは、廃棄物処理法や和歌山県公害防止条例によって、原則として禁止されている行為です。しかし、一定の事由に該当する場合には、例外的に認められているものもあります。
実際に行っている野焼きが例外的に認められている野焼きに該当するかどうかは法的判断を要する事項となりますので、弁護士の判断が重要となってきます。
野焼きにより近隣トラブルが生じている場合には、まずは、ご自身の行為が違法か適法かを把握することが大切です。そのため、まずは弁護士に相談をして、アドバイスを求めるようにしましょう。 -
(2)近隣トラブルに発展しているケースでは逮捕の可能性もある
野焼きで逮捕される可能性は低いと説明しましたが、近隣トラブルにまで発展しているケースでは、野焼きの態様としても悪質なケースである可能性があります。このようなケースでは、警察によって逮捕される可能性もあるため、慎重に対応することが必要です。
まだ逮捕されていない段階であれば、早期に弁護士に相談することで逮捕のリスクを減らせる可能性があります。
万が一逮捕された場合でも、事前に弁護士に相談していれば、逮捕された場合の取り調べの対応を知ることが可能です。また逮捕後は、すぐに弁護士に面会を求めることができます。
逮捕中は、たとえ家族であっても面会が認められておらず、面会できるのは弁護士に限られる点に留意しましょう。 -
(3)近隣住民との対応を任せることができる
野焼きで近隣トラブルに発展しているとき、当事者同士でやり取りをするのは、さらなるトラブルを招くリスクがあります。
弁護士であれば、本人に代わって相手とやり取りをすることができますので、穏便に話し合いを進めることが可能です。ひとりで対応することが困難に感じられる方は、弁護士に相談してみましょう。
5、まとめ
野焼きは、廃棄物処理法や条例により原則として禁止されている行為です。安易な気持ちで野焼きをしてしまうと、場合によっては懲役や罰金といった刑罰を科されるリスクもあるため、注意が必要です。
近隣トラブルが生じているという方は弁護士のサポートが不可欠となりますので、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています