犯罪被害にあったらどうしたらよい? 相談先や支援制度を解説
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和歌山県警察が公表する「和歌山県の犯罪情勢(令和4年中 確定値)」によると、令和4年中の刑法犯認知件数は3438件で、20年ぶりに前年の件数よりも増加しました。
和歌山県の人口はおよそ90万人いるため、年間で1000人のうち3~4人が犯罪被害にあっていることになります。このように数値化してみると、犯罪の被害に巻き込まれる可能性は決して低くないといえるでしょう。
いざ犯罪被害に巻き込まれたら、どこに相談すればよいのか、どのように行動するべきなのかが分からないという方は多くいらっしゃいます。
本コラムでは、犯罪被害にあってしまったときの相談先や、被害にあったそのときに取るべき行動について、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。
1、犯罪被害にあったときに取るべき行動
犯罪の被害にあうという事態は、非日常的なできごとです。そのため、実際に被害にあったらどう対応すればよいのか、気が動転して判断できないことがあります。
まずは、犯罪被害にあったときに取るべき行動を説明します。
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(1)警察への申告を急ぐ
犯罪被害にあったとき、何よりも急ぐべきは警察への申告です。
たとえ被害が夜間・休日であったとしても、朝を待ったり、日を改めたりしてはいけません。
警察は24時間・365日、年中無休なので、いつでも遠慮なく被害にあったことを申告しましょう。
警察へ申告するまでに間が空いてしまうと、その被害についての鮮明な記憶が薄れてしまいます。
たとえば、殴られてケガをした傷害事件では、加害者が左右のどちらの手で殴ったのか、拳を握っていたのか平手だったのか、まっすぐ殴るストレートパンチだったのか、それとも外側から殴るフックだったのかなど、想像以上に詳しい状況を説明しなくてはなりません。
被害の記憶が薄れないうちに、警察への申告を急いで行ってください。 -
(2)できる限り証拠を確保する
警察への申告とあわせて、できる限り自分でも被害の証拠を確保しましょう。
散乱している室内や負っているケガの状況などは、可能であれば写真・画像として記録しておくべきです。
犯人の遺留物や犯行に使われた物(供用物件)がある場合は、証拠隠滅や散逸を防がなくてはなりません。
ただし、不用意に触れてしまうと指紋やDNAといった重要な鑑識資料が失われてしまうので、厚手のチャック付きポリ袋や布などで覆って保護しましょう。
2、犯罪被害にあった場合の相談先
犯罪被害にあったときの相談先を、3つご紹介いたします。
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(1)最寄りの交番や警察署
口頭で被害を申告する際は、最寄りの交番や管轄の警察署を訪ねましょう。
交番はパトロールなどで不在になっていることがありますが、警察署には刑事事件の担当者が常駐しています。そのため、交通手段がないなどの不都合がなければ、警察署を訪ねたほうが賢明です。 -
(2)緊急時は110番通報
今まさに被害にあっている・犯人がその場にいる・通り魔的な被害にあった、などの緊急性が高い場合は、その場から直ちに110番通報しましょう。
110番通報は、どこから電話をかけても警察本部の指令室につながります。
状況を伝えれば、付近をパトロールしているパトカーが急行するので、程なくすれば警察官が到着します。 -
(3)各都道府県警察の被害相談窓口
各都道府県警察には、被害相談を受け付ける窓口が設置されています。
どこに相談すればよいのか分からない、あるいは自分自身に起きたできごとが犯罪といえるのか分からないといった場合は、警察への相談・届出に先立って、被害相談窓口を活用するとよいでしょう。
参考:各都道府県警察の被害相談窓口
3、犯罪被害にあった際の支援制度
犯罪の被害者には、犯罪被害者等施策・支援制度が用意されています。
これは、犯罪被害者の被害回復や軽減をすることによって、平穏な生活を取り戻す支援を行う制度です。ここでは、本制度にもとづいた公的支援を5つ紹介します。
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(1)被害者連絡制度
犯罪の被害者に対して、捜査や検挙の状況、加害者の処分内容などを通知する制度です。
被害者には、定期的な進捗報告、加害者の逮捕や送致、起訴、刑事裁判の結果などが伝えられます。 -
(2)被害者参加制度
特定の事件について、被害者が刑事裁判に出席して加害者に質問するなど、刑事裁判に直接関与できる制度です。
対象となるのは殺人・傷害・危険運転致死傷など犯罪行為によって人を死傷させた事件や、強制性交等・強制わいせつ・逮捕・監禁・過失運転致死傷などの事件で、被害者だけでなく被害者の遺族も参加できます。
刑事裁判に参加すること自体、怖く感じてしまったり、身構えてしまったりするかもしれませんが、必要に応じて遮蔽やビデオリンクといった保護対策も講じられるので、心配する必要はありません。 -
(3)損害賠償命令制度
刑事裁判の起訴状に記載された犯罪事実にもとづいて、その犯罪によって生じた損害の賠償を請求できる制度です。
刑事裁判の有罪判決が下された後、その訴訟記録や証拠をもとに原則4回以内の期日で損害賠償命令を決定するもので、被害者の損害賠償請求にかかる負担を軽減します。
対象となるのは殺人・傷害など、故意の犯罪行為によって人を死傷させた事件の被害者や相続人などです。 -
(4)犯罪被害給付制度
殺人など故意の犯罪行為によって不慮の死を遂げた被害者の遺族や、重傷・障害など重大な被害を受けた被害者自身について、国から給付金が支払われる制度です。
支給額は、被害者の年齢や勤労による収入額などにもとづいて算出されます。 -
(5)警察による経済的支援
犯罪の立証などに必要な費用を警察が負担する制度です。
傷害事件の証拠として診断書を要する場合の診察料や診断書料、性犯罪被害者の性感染症検査や緊急避妊、人工中絶などにかかる費用を警察が負担します。
4、犯罪被害にあった場合でも弁護士に相談を
刑事事件について弁護士の助けが必要となるのは、自分が容疑をかけられているときだというイメージが強いかもしれませんが、被害にあった立場でも、弁護士のサポートを要することがあります。
どんな場面で弁護士のサポートが必要になるのか、解説していきます。
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(1)加害者を厳しく罰してほしいときの告訴をサポートできる
犯罪被害を警察に訴えても、残念ながら積極的に事件化してくれないことがあります。理由はさまざまですが、なかには明らかな犯罪が存在するのに、業務多忙などを理由とした消極的なケースも珍しくありません。
このような事態は許されるべきではありませんが、あくまでも一般個人である被害者の意向ひとつで警察捜査を発動させるのは困難でしょう。
そこで有効となるのが、「告訴」という手続きです。
告訴は、犯罪の加害者を厳しく処罰してほしいと捜査機関に申告する手続きで、犯罪が存在する疑いがある限り、警察の独断では不受理にできません。警察は速やかに捜査を遂げて検察官に引き継がなくてはならないので、加害者の刑事責任を追及できます。
告訴の方法は文書または口頭で行うものとされていますが、警察に受理を促すためには充実した告訴状の提出が必須です。
犯罪事実を精査し、証拠を集めて警察に告訴を受理させるためには、法的な知識と経験をもつ弁護士のサポートが欠かせません。 -
(2)加害者との示談交渉をサポートできる
刑事事件の加害者にとって、逮捕や厳しい刑罰は何としてでも避けたいものです。
そこで、加害者は「示談」をもちかけて謝罪と弁済を申し出て、被害届や告訴の取り下げを求めてきます。
被害者にとっても示談は賠償を得られるという点で利益のあるものですが、一方で加害者と話し合いの場をもつ必要があるなど、対応に迷う場面も少なくありません。
特に、DVなどのように被害者を保護する必要性が強い事件では、加害者と被害者が同席すること自体が危険を伴うので、安全に示談交渉を進めるには弁護士を代理人とするのが最善です。
また、示談の成否を決めるひとつの要素として、「示談金」の額が挙げられます。
当然、加害者としてはできるだけ示談金の額を安く抑えたいと考えていますが、一般の個人では提示された金額が妥当であるかどうかも判断できません。
十分な示談金の支払いを得るためにも、経験豊富な弁護士のサポートは必要不可欠です。
5、まとめ
犯罪被害にあったら、まずは警察への申告を急ぐべきです。しかし、思いがけない被害に戸惑ってしまったり、そもそも自分の身に振りかかったできごとが犯罪なのかを判断できなかったりするケースも珍しくありません。
また、「加害者を厳しく罰してほしい」と求めたり、加害者との示談交渉に臨まなくてはならなかったりと、被害者自身が積極的に対応しなければならない場面も生じます。個人での対応では不安に感じることも多いので、弁護士に相談してサポートを求めるのが最善です。
犯罪被害にあったら、警察への申告とあわせてベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスにご相談ください。
被害者の方に寄り添って不安を解消しながら、被害回復や事件解決に向けたサポートを尽くします。
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