相続できない人は誰? 相続欠格と相続廃除の違い、遺産相続の流れ

2025年01月29日
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相続できない人は誰? 相続欠格と相続廃除の違い、遺産相続の流れ

令和4年の和歌山市の出生者数は2281名で、死亡者数は5144名でした。亡くなった方(被相続人)の相続が発生した場合、通常は法律で定められた法定相続人が遺産を受け取ります。

しかし、「相続欠格」と「相続廃除」という制度により、相続人であっても遺産を相続できないことがあります。相続欠格とは、重大な非行を行ったために法律上相続権を失う制度で、相続廃除は被相続人が特定の相続人をあらかじめ排除する制度です。

ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が、これらの制度の違いや共通点、遺産相続の流れについ解説します。

出典:「令和5年版統計資料」(和歌山市)


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1、民法で定められた「相続人」とは

民法では、亡くなった人(=被相続人)の遺産を相続できる「法定相続人」の範囲と相続する順位が定められています。(民法第887条第1項、第890条、第889条第1項第1号、同項第2号)。

  • 【常に相続人となる】配偶者
  • 【第1順位】子(子が亡くなっている場合は孫)
  • 【第2順位】子がいない場合は、直系尊属(父母もしくは祖父母)
  • 【第3順位】子も直系尊属もいない場合は、兄弟姉妹


相続人の構成に応じた法定相続分(=相続できる遺産の割合)は、下表のとおりです(民法第900条)。

相続人の構成 法定相続分
配偶者と子 配偶者:2分の1
子:2分の1
配偶者と直系尊属 配偶者:3分の2
子:3分の1
配偶者と兄弟姉妹 配偶者:4分の3
兄弟姉妹:4分の1

※子、直系尊属、兄弟姉妹が複数人いる場合は、人数割り(ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1)

なお、被相続人の子または兄弟姉妹が死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合は、孫が代襲相続によって相続人となります(民法第887条第2項、第889条第2項)。

また、被相続人の直系卑属(孫、ひ孫など)に限り、再代襲相続(=代襲相続人をさらに代襲相続すること)も認められています(民法第887条第3項)。
代襲相続人の相続分は、被代襲者と同じです。

2、本来は相続人なのに、遺産を相続できない人|相続欠格とは

上記のルールに従えば相続人となる人であっても、「相続欠格」に該当する場合は遺産を相続することができません。

  1. (1)相続欠格に当たる事由

    民法では5つの相続欠格事由が定められています(民法第891条)。

    具体的には、以下に該当する相続人が、相続権を失います。

    1. ① 故意に被相続人・先順位相続人・同順位相続人を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者

    2. ② 被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者
      ※是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であったときを除く

    3. ③ 詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、または遺言の撤回・取り消し・変更をすることを妨げた者

    4. ④ 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、または遺言の撤回・取り消し・変更をさせた者

    5. ⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
  2. (2)欠格者には相続分・遺留分が認められない

    相続欠格に該当した者は、被相続人の遺産を相続することができません

    また、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(=相続等によって取得できる遺産の最低保障額)が認められていますが、相続欠格に該当した者については、遺留分もはく奪されます。

  3. (3)欠格者は遺贈を受けることもできない

    相続欠格に該当した者は、遺贈を受けることもできません(民法965条)。もし欠格者に対して遺贈をする旨の遺言書が作成されていても、欠格者に対する遺贈に関する部分は無効となります。

3、相続欠格と相続廃除の共通点・違い

相続欠格と同じく、本来であれば相続人である者が相続権を失う制度として「相続廃除」があります。

相続欠格に対して、相続廃除がどのような点で共通しており、どのような違いがあるのかについて解説します。

  1. (1)相続廃除とは

    「相続廃除」とは、以下の行為をした推定相続人(=相続発生後に相続人となる者)につき、被相続人の意思表示によって相続権を失わせることをいいます(民法第892条)。

    • 被相続人に対する虐待
    • 被相続人に対する重大な侮辱
    • その他の著しい非行
  2. (2)相続廃除の手続き

    相続廃除の効果は、以下のいずれかの手続きによって発生します。

    1. 被相続人の家庭裁判所に対する申立て
      被相続人の申立てを受けて、家庭裁判所が相続廃除の要件を満たしていると判断した場合は、推定相続人の廃除に関する審判を行います。

    2. 遺言・遺言執行者の家庭裁判所に対する申立て
      被相続人が遺言で、推定相続人を廃除する意思があった場合、遺言執行者が家庭裁判所に対して相続廃除の申立てを行います。
      遺言執行者の申立てを受けて、家庭裁判所が相続廃除の要件を満たしていると判断した場合は、推定相続人の廃除に関する審判を行います。
  3. (3)共通点|廃除された者には相続分・遺留分が認められない

    相続欠格者と同じく、相続廃除となった者については、相続分と遺留分がいずれも認められません。

    したがって、廃除された者は被相続人の遺産を一切相続することができず、遺言書の内容について不服を主張することもできません。

  4. (4)違い①|相続廃除は取り消すことが可能

    その一方で、相続廃除は取り消すことが認められています
    相続廃除を取り消す手続きは、相続廃除をする際と同様に、被相続人または遺言執行者の家庭裁判所に対する申立てです(民法第894条、第893条)。

    家庭裁判所の審判によって廃除が取り消された場合、推定相続人は相続権を回復します。

  5. (5)違い②|廃除された者でも、遺贈は受けられる

    相続廃除となった場合でも、遺言によって遺贈を受けることはできると解されています。

    相続廃除は、被相続人の意思によって行われるものです。被相続人の意思によって廃除された者に遺産を与えると決めたのであれば、それを妨げる理由はないので、廃除された者に対する遺贈は認められています。

    同様に、相続廃除においても、被相続人の意思による取り消しが認められています。

4、相続欠格や相続廃除に該当するとどうなる?

相続欠格や相続廃除に該当した者は、遺産分割に参加できませんその一方で、欠格者または廃除された者の子は、代襲相続によって遺産分割に参加できる場合があります

  1. (1)欠格者・廃除された者は遺産分割に参加できない

    相続欠格や相続廃除になると、遺産分割協議への参加資格がありません。したがって、遺産分割協議は欠格者・廃除された者を除いた残りの相続人で行うことになります。

    また、欠格者・廃除された者には遺留分も認められないので、偏った遺言書や生前贈与を理由に遺留分侵害額請求(民法第1046条第1項)を行うこともできません。

  2. (2)欠格者・廃除された者の子による代襲相続は認められる

    相続欠格または相続廃除によって相続権を失った者に子がいる場合は、その子が代襲相続によって相続人となる場合があります。

    代襲相続が発生するケースを下表にまとめました。

    欠格者・廃除された者(=被代襲者) 代襲相続人
    被相続人の子 被代襲者の子である被相続人の孫
    被相続人の孫 被代襲者の子である被相続人のひ孫
    ※玄孫以降も同様
    被相続人の兄弟姉妹 被代襲者の子である被相続人の甥・姪


    代襲相続人の相続分は、相続権を失った欠格者・廃除された者(=被代襲者)と同じです。代襲相続人が複数人いる場合は、被代襲者の相続分を人数に応じて按分します。

    相続欠格または相続廃除によって代襲相続が発生した場合、世代が異なる疎遠な相続人同士で遺産分割協議をせざるを得ないケースが多いです。

    また、相続欠格や相続廃除の原因となった事情について、相続人同士の間でしこりが残っていることも想定されます。そのため、通常の遺産分割に比べると、相続人間で深刻なトラブルが発生するリスクが高まります。

    代襲相続人との遺産分割協議を円滑に行うためには、弁護士のサポートが重要です。相続欠格や相続廃除によって相続人が変動する場合には、事前に弁護士へ相談することをおすすめします

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5、まとめ

相続欠格とは、被相続人の殺害(殺害しようとした)や、被相続人の遺言書を偽造によって相続権を失うことです。

また、被相続人に対する虐待や重大な侮辱、その他の著しい非行をした者も、被相続人の申立てを受けた家庭裁判所の審判により、相続廃除によって相続権を失うことがあります。

相続欠格や相続廃除が発生した場合、代襲相続などが影響して、遺産分割協議が紛糾するケースが多いです。スムーズに遺産分割を完了するためには、弁護士に依頼してサポートを受けることをおすすめします。

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