親が亡くなった時の相続順位とは|法定相続人の範囲や法定相続分
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和歌山県が公表する「令和2年 人口動態統計(確定数)の概況」によると、令和2年の和歌山県内における出生数は5732人、死亡数は1万2610人でした。和歌山県においては、20年以上もの期間、出生数を死亡数が上回っています。
親が亡くなったとき、遺産相続の手続きは避けて通れません。遺産相続が始まれば、法定相続人(相続人)の間で遺産分割協議などを行います。法定相続人となる対象者の範囲・相続順位・法定相続分などのルールを踏まえて、正しい形で遺産分割を進めましょう。
本コラムでは、親が亡くなった場合の遺産相続に関する基本的なルールについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。
1、親が亡くなった場合の相続順位は? 遺産相続の基礎知識
親が亡くなった際は、遺産分割(遺産を分ける手続き)を行う必要があります。遺産分割に参加するのは、法定相続人です。
まずは遺産分割の手続きと、法定相続人の範囲や相続順位について、基本的な知識を確認しておきましょう。
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(1)親の遺産を分ける手続き|遺産分割協議・調停・審判
亡くなった人(被相続人)の遺産を分ける手続きを、遺産分割といいます。遺産分割は、主に協議・調停・審判という3つの手続きを通じて行います。
- 遺産分割協議 法定相続人全員で話し合って、遺産の分け方を決める手続きです。
- 遺産分割調停 家庭裁判所において、調停委員の仲介のもとで遺産の分け方を話し合う手続きです。
- 遺産分割審判 家庭裁判所が審理を行い、遺産の分け方を決める手続きです。
いずれの方法であっても、遺産分割には法定相続人全員の参加が必須となります。
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(2)法定相続人の範囲と相続順位
遺産分割に参加すべき法定相続人となるのは、配偶者に加えて、子・直系尊属・兄弟姉妹のうち最上位者です。
配偶者がいない場合は、子・直系尊属・兄弟姉妹のうち最上位者のみが相続人となります。
子・直系尊属・兄弟姉妹の間では、相続順位が以下のとおりです。- 第1順位:子
- 第2順位:直系尊属
- 第3順位:兄弟姉妹
なお、最上位者である相続人が複数いる場合には、その全員が法定相続人となります。
たとえば、あなたが被相続人の子どもである場合、相続順位は第1順位です。このとき、3章で後述するような例外的な事情がない限り、あなたは法定相続人となります。
あなた以外に法定相続人となるのは、被相続人の配偶者と他の子どもです。
仮に被相続人に直系尊属や兄弟姉妹がいるとしても、被相続人の子どもがいる限り、原則として直系尊属や兄弟姉妹は法定相続人になりません。
2、親が亡くなった場合における子どもの法定相続分
法定相続人が相続できる遺産の割合(相続割合)を、法定相続分といいます。最終的に家庭裁判所が審判を行う場合、法定相続分を基準に遺産の分割方法を決定します。
ここからは、親が亡くなった際、子どもにはどの程度の法定相続分が認められるのか、具体例を紹介します。
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(1)配偶者と子どもが相続人の場合
配偶者と子どもが相続人の場合、配偶者と子どもの法定相続分は2分の1ずつです(民法第900条第1号)。仮に遺産が4000万円あるとすれば、配偶者が2000万円、子どもが2000万円の法定相続分を有します。
なお、子どもが複数いるケースでは、2分の1の法定相続分を人数分割って分配します。
たとえば子どもが2人いるなら、それぞれの子どもの法定相続分は4分の1ずつです。遺産総額が4000万円であれば、配偶者が2000万円、2人の子どもは1000万円ずつの法定相続分を有します。 -
(2)子どもだけが相続人の場合
子どもだけが相続人のケースでは、それぞれの子どもが人数で割っただけの法定相続分を有します。
子どもが1人であれば、その子どもがすべての遺産を相続します。仮に遺産総額が4000万円であれば、4000万円すべてが1人の子どものものです。
これに対して、子どもが2人であれば法定相続分は2分の1ずつ、3人であれば3分の1ずつとなります。仮に遺産総額が4000万円、子どもが2人であれば、それぞれの子どもが2000万円ずつの法定相続分を有します。
3、親の遺産を子どもが相続できないケース
親が亡くなった場合、子どもは法定相続人になるのが原則です。しかし以下の場合には、例外的に子どもが相続権を得られず、遺産を相続できません。
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(1)非嫡出子が亡くなった父親から認知を受けていない場合
婚姻外で生まれた子ども(非嫡出子)は、生まれた当初は父親との間に法律上の親子関係がありません。
父親と非嫡出子の間に法律上の親子関係を生じさせるには、父親による「認知」が必要です(民法第779条)。認知を受けていない非嫡出子には、父親が亡くなった際の相続権が認められません。
ただし、父親から認知を受けていない非嫡出子は、父親が亡くなった日から3年以内に認知の訴えを提起して、判決によって認知の効果を認めてもらうことができます(民法第787条)。 -
(2)亡くなった義理の親と養子縁組をしていない場合
亡くなった親が再婚していた場合、義理の親(配偶者の親)との間には、結婚をもって法律上の親子関係が発生するわけではありません。義理の親と法律上の親子になるためには、養子縁組の届出が必要です(民法第799条、第739条)。
養子縁組の届出を行っていない状態で義理の親が亡くなったとしても、義理の親の遺産を相続することはできません。 -
(3)相続欠格に該当する場合
被相続人の子どもが「相続欠格」(民法第891条)に該当する場合、その子どもは親の遺産を相続できないことにも注意しましょう。
相続欠格に該当する事由は以下の5つで、いずれも公正な相続を侵害するきわめて悪質な行為が挙げられています。<相続欠格となる5つの事由>- ① 故意に被相続人・先順位相続人・同順位相続人のいずれかを死亡させ、または死亡させようとしたために、刑に処せられたこと
- ② 被相続人が殺害されたことを知っていながら、告発または告訴をしなかったこと(是非の弁別がない場合、および殺害者が自己の配偶者または直系血族であった場合を除く)
- ③ 詐欺または強迫によって、遺言やその撤回・取り消し・変更することを妨げたこと
- ④ 詐欺または強迫によって、遺言をさせ、または遺言を撤回・取り消し・変更させたこと
- ⑤ 被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿したこと
なお、被相続人の子どもが相続欠格に該当する場合、さらにその子ども(被相続人の孫)が代襲相続人となります(民法第887条第2項)。
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(4)相続廃除の審判を受けた場合
たとえば、子どもが親に対して虐待・重大な侮辱その他の著しい非行をした場合、親はその子どもについて、家庭裁判所に「相続廃除」の審判を申し立てることができます(民法第892条)。また、相続廃除の申し立ては遺言によって行うことも可能です(民法第893条)。
親の相続について相続廃除の審判を受けた子どもは、親の遺産を相続することができません。
なお、被相続人の子どもが相続廃除によって相続権を失った場合も、相続欠格と同様に、さらにその子ども(被相続人の孫)が代襲相続人となります(民法第887条第2項)。 -
(5)相続放棄をした場合
相続人には、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることが認められています。
相続放棄とは、遺産を一切相続しない旨の意思表示です。相続放棄すると、当初から相続人にならなかったものとみなされ(民法第939条)、被相続人が死亡時に有した資産・負債のいずれも相続しないことになります。
したがって、親が亡くなったときに相続放棄をした子どもは、親の遺産を相続することができません。子どもが相続放棄をした場合、相続欠格や相続廃除とは異なり、さらにその子ども(被相続人の孫)による代襲相続は認められない点に注意が必要です。
なお、亡くなった親が生前に多額の借金を負っていた場合などには、子どもは自ら相続放棄をすることが有力な選択肢となります。
ただし、相続放棄は原則として、相続開始を知った時から3か月以内に行わなければなりません。もし相続放棄を視野に入れて対応する場合には、早い段階で弁護士へのご相談をおすすめいたします。
4、遺産相続について弁護士に相談するべき理由
遺産分割・遺留分侵害額請求・相続放棄など、遺産相続に関する手続き・トラブルについては、弁護士へ相談することが推奨されます。
弁護士は、各ご家庭の事情や依頼者のご希望を考慮して、遺産相続の適切な進め方やトラブルの妥当な解決策などを総合的にアドバイスすることが可能です。また、法定相続人間の調整についても弁護士が代行することで、遺産分割を円滑・迅速に完了できる可能性が高まります。
さらに、調停・審判などの複雑な法的手続きが必要になった際にも、弁護士に一任すれば安心です。
何か相続のことでお困りの際には、遺産相続自体の手続きに期限もあるため、まずは気軽に弁護士に相談をしてみることから始めてみましょう。
5、まとめ
親が亡くなった場合、相続順位が第1順位である子どもは、原則として法定相続人となります。他の法定相続人(配偶者・他の子ども)と話し合って、スムーズに遺産分割を完了できるように努めましょう。
法定相続人間の遺産分割協議がうまくまとまらない場合には、弁護士に調整を依頼することをおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関する経験を豊富に有する弁護士が多数在籍しています。お悩みの際には、ぜひ一度ご相談ください。
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