遺産分割協議をしないとどうなる? 手続きの期限や放置するリスク
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令和4年の和歌山市の出生者数は2281名、死亡者数は5144名でした。
家族が亡くなったら、相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。遺産分割協議を行わずに放置していると、さまざまなトラブルが生じるリスクがあるので、速やかに対応することが大切です。
本記事では、遺産分割協議をしないとどうなるのかについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。


1、遺産分割協議をしないとどうなる?
家族が亡くなった時は、相続人全員の間で遺産分割協議を行いましょう。遺産分割協議をしないと、さまざまなリスクを負うことになってしまうので注意が必要です。
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(1)遺産分割協議とは
「遺産分割協議」とは、相続人全員の間で遺産の分け方を話し合う手続きです。亡くなった家族が財産を残していて、かつ相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行う必要があります。
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(2)遺産分割協議をしない場合のリスク
遺産分割協議をしないで放置していると、相続人は以下のようなリスクを負うことになってしまいます。
- 相続手続きが進まず、遺産を活用できない
- 遺産を管理している他の相続人が、勝手に遺産を使い込んでしまう
- 相続不動産の管理が行き届かず、近隣に被害を及ぼしてしまう
- 相続人が亡くなって、相続関係が複雑化する
- 相続税の申告が二度手間になる
このようなリスクを避けるため、遺産分割協議は早めに行いましょう。
2、遺産分割協議に期限はある?
遺産分割協議そのものに期限はありませんが、遺産分割に関連する手続きの中には、期限が設けられているものがあります。
遺産分割が完了しなければ、関連する手続きを適切に進めることが難しくなるので、早めに遺産分割協議へ着手しましょう。
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(1)遺産分割協議そのものに期限はない
遺産分割協議自体は、相続発生後いつでも行うことができます。特に期限は設けられていません。
遺産分割が完了していない状態の遺産は、相続人全員の共有となります(民法第898条)。 -
(2)遺産分割に関連する手続きの期限に要注意
遺産分割を行う際には、遺産分割協議だけでなく、関連するさまざまな手続きを行わなければなりません。その中には、以下に挙げるように期限が設けられている手続きもあります。
遺産分割の関連手続き 期限 相続放棄 原則として、自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内 相続税の申告、納付 被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内 不動産の相続登記 相続の開始および不動産の所有権の取得を知った日から3年以内 使い込まれた預貯金の不当利得返還請求 以下のうち、いずれか早く経過する期間内
- 権利を行使できることを知った時から5年
- 権利を行使できる時から10年
相続回復請求 以下のうち、いずれか早く経過する期間内
- 相続権を侵害された事実を知った時から5年
- 相続開始の時から20年
特別受益および寄与分の相続分への反映 相続開始の時から10年以内
遺産分割協議を始めるのが遅れると、上記のような手続きへの対応も遅れ、期限を過ぎてしまうおそれがあります。必要な手続きを洗い出して期限内に完了するためにも、遺産分割協議には早めに着手しましょう。
3、遺産分割協議の流れ
遺産分割協議は、以下の流れで行います。
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(1)遺言書の有無と内容を確認する
まずは、遺言書の有無を確認しましょう。遺言書によって分割方法が指定された財産は、原則としてその内容のとおりに分けます。
遺言書は、被相続人の遺品として保管されていることがあります。その他、相続人が遺言書を預かっているケース、公証役場や法務局の遺言書保管所で保管されているケースなどもあります。
見落としていた遺言書が後から出てくると、遺産分割をやり直すことになってしまいます。遺産分割協議を始める前に、心当たりのある場所を漏れなく探しましょう。
なお、公証役場で保管されている公正証書遺言と、法務局の遺言書保管所で保管されている自筆証書遺言を除き、遺言書を発見したら家庭裁判所の検認を受ける必要があります(民法第1004条第1項)。
参考:「遺言書の検認」(裁判所) -
(2)相続人と相続財産を調査・把握する
遺産分割協議には、相続人全員が参加しなければなりません。したがって、先に法定相続人を調査して漏れなく確定する必要があります。
相続人になるのは、被相続人の配偶者と、以下の順位に従った最上位者です。市区町村役場から戸籍謄本類を取得して、相続人を漏れなく把握しましょう。相続順位 ポイント 第1順位:被相続人の子 被相続人の子が「死亡」「欠格」「廃除」のいずれかで相続権を失った場合、その子ども(=被相続人の孫)が代襲相続人となります。さらに、ひ孫以降の再代襲相続も認められています。 第2順位:被相続人の父母(直系尊属) 子がいない場合、被相続人の直系尊属(父母や祖父母)が相続人となります。直系尊属が複数いる場合は、最も親等が近い人が相続人になります。 第3順位:被相続人の兄弟姉妹 子も直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。相続人が「死亡」「欠格」「廃除」のいずれかになった場合は、その子ども(=被相続人の甥・姪)が代襲相続人となります。
また、遺産分割の対象となる相続財産も、漏れなく把握する必要があります。
遺産分割の対象となるのは、被相続人が亡くなった時点で所有していた財産から、遺言書によって贈与された財産、および死因贈与された財産を除いたものです。
預貯金・有価証券・不動産・貴金属類などの財産を、被相続人から生前に聞いていた話や遺品などを手掛かりにして、漏れなく調査しましょう。 -
(3)相続人全員で遺産分割協議を行う
相続人と相続財産の把握が済んだら、相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。一人でも相続人が欠けていると、遺産分割協議が無効になってしまうので、必ず相続人全員が参加しなければなりません。
遺産分割協議では、相続財産の分け方を話し合います。各相続人が希望を出し合い、互いに譲歩しながら合意を目指します。
遺産分割協議は対面で行うケースもありますが、電話やメールなどの方法で行っても構いません。各相続人に都合に合わせて、便利な方法を選択しましょう。 -
(4)遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議において合意が得られたら、その内容を記載した遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書は、預貯金の相続手続きや不動産の相続登記申請、相続税申告などの際に提出する必要があります。
遺産分割協議には、遺産分割の内容を疑義のない文言で明確に記載することが大切です。相続登記申請との関係で、不動産については登記簿の情報にそろえて記載する必要があるなどの注意点も存在します。
弁護士のサポートを受けながら、適切な内容の遺産分割協議書を作成しましょう。 -
(5)合意が得られなければ、遺産分割調停を申し立てる
遺産分割協議において合意を得られる見込みがない時は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。
遺産分割調停では、中立の調停委員が各相続人の言い分を聞き取り、歩み寄りを促すなどして合意形成をサポートします。調停において合意が得られたら、その内容をまとめた調停調書が作成されます。
調停が不成立となった場合は、家庭裁判所が審判によって遺産分割の方法を決定します。審判手続きでは、当事者が提出した資料が精査されますので、弁護士と協力して提出する資料の準備を整えましょう。
参考:「遺産分割調停」(裁判所)
4、遺産分割協議について弁護士に相談するメリット
遺産分割協議は相続人だけで行うこともできますが、弁護士に仲介を依頼することもできます。
遺産分割協議の対応を弁護士に依頼することには、主に以下のメリットがあります。
- 民法のルールや家庭の状況などを踏まえて、適切な遺産の分け方についてアドバイスを受けられる
- 論点を整理して、スムーズに遺産分割協議を進めることができる
- 親族と直接話す必要がなくなり、労力やストレスが軽減される
- 遺産分割協議がまとまらない場合には、調停や審判の対応もワンストップで依頼できる
特に、遺産分割の方法について他の相続人と揉めてしまっている場合は、弁護士に相談することがトラブル解決への近道です。
遺産分割協議について悩んでいる方は、お早めに弁護士へご相談ください。
お問い合わせください。
5、まとめ
遺産分割協議をしないで放置していると、さまざまな相続トラブルの原因になります。関連する相続手続きの期限を経過してしまい、不利益を被ることにもなりかねません。
遺産分割協議の進め方が分からない場合や、相続人同士で揉めてしまって遺産分割協議が進展しない場合は、弁護士に相談してサポートを受けることが重要です。
弁護士は、論点を整理した上で相続人間の話し合いを仲介し、着実に遺産分割協議を前に進めます。遺産分割協議を行う際の注意点も、弁護士にご相談いただければ、分かりやすく具体的にアドバイスいたします。
ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。遺産分割協議やその他の相続問題について悩んでいる方は、お早めにベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスへご相談ください。
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