交通事故後のむちうち症が「嘘」だと疑われたときの対処法

2023年07月06日
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交通事故後のむちうち症が「嘘」だと疑われたときの対処法

和歌山県警察が公表している「和歌山県内(令和4年中) 交通事故多発交差点 ワーストランキング」によると、上位10件のうち和歌山市内の交差点が8つランクインしています。このように、和歌山市内には交通事故が発生しやすい危険な交差点が複数存在しているため、注意して運転をするようにしましょう。

交通事故の被害に遭ってしまったときの怪我でもっとも多いのは、「むちうち症」だと言われています。むちうち症とは、首がムチのようにしなることにより引き起こされる症状です。レントゲンやMRIなどの他覚所見がなく、自覚症状のみに基づくものであることが多いことから、保険会社からは「むちうち症が嘘ではないか」と疑われることがあります。このように疑念を抱かれた場合には、どう対処したらよいのでしょうか。

今回は、交通事故によるむちうち症が嘘だと疑われたときの対処法について、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。

1、事故後のむちうち症が嘘だと疑われてしまう理由

事故後のむちうち症が嘘だと疑われてしまうのには、どのような理由があるのでしょうか。まずは、むちうち症とは何か、むちうち症が嘘だと疑われる理由などについて説明します。

  1. (1)むちうち症とは

    むちうち症とは、首に強い衝撃が加わることによって生じる症状の総称です。正式な診断名としては「頚椎捻挫」や「外傷性頚部症候群」などになります。具体的な症状としては、首の痛み、しびれ、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りのようにさまざまです。

    交通事故では、追突や衝突などにより、首に強い衝撃が加わることが多くあります。そのため、交通事故による怪我のなかでも、もっとも多いものがむちうち症です。

  2. (2)むちうち症が嘘だと疑われる理由

    むちうち症が嘘だと疑われてしまうのは、以下のような理由が考えられます。

    ① 事故直後に病院を受診していない
    むちうち症の症状は、事故直後ではなく、事故から数時間や数日後など遅れて出てくることがあります。
    事故から数日後に初めて病院を受診し、症状を訴えたとしても、保険会社からは「本当に交通事故による怪我だろうか」と、事故とむちうち症との因果関係を疑われてしまうことにつながるでしょう。
    このように、むちうち症だと事故直後に病院を受診しないことがありますが、保険会社からは嘘だと疑われる原因になりますので、注意が必要です。

    ② むちうち症を示す客観的証拠がない
    むちうち症は、レントゲンやMRIなどの検査では異常が見つからず、被害者本人の自覚症状だけであることが多いです。
    画像所見などの客観的な資料によって、むちうち症を証明できればよいですが、「頭が痛い」「耳鳴りがする」「吐き気がする」などの自覚症状だけでは、症状を客観的に証明することができません。そのため、「慰謝料をもらうために嘘を吐いているのでは」と疑われることがあります。

    ③ 軽微な事故であることが多い
    むちうち症は、比較的軽微な事故で生じるケースが多いです。
    車の損傷もほとんどないような事故では、「この程度の事故で怪我をするわけがない」という先入観から、むちうち症を疑われることもあります。

2、むちうち症なのに嘘だと疑われないための対処法

保険会社などからむちうち症が嘘だと疑われないようにするためにも、事故後に必要な対応を説明します。

  1. (1)事故後はすぐに病院を受診する

    事故発生後、時間がたってから病院を受診すると、事故との因果関係を否定されるリスクが高くなります。そのため、交通事故の被害にあった場合には、すぐに病院を受診するようにしましょう。

    事故直後は興奮していることもあり、痛みなどを感じづらい状態にありますので、自分では何ともないと思っていても必ず病院を受診することが大切です。

  2. (2)症状は正確に医師に伝える

    むちうち症は、レントゲンやMRIなどの検査では異常が見られないことが多いです。医師としても、被害者の自覚症状などを踏まえて、むちうち症の診断を行います。

    被害者が医師に説明した痛みやしびれなどの症状は、カルテに記載されるため、ご自身の症状を正確に医師に伝えることが重要です。少しでも身体に違和感がある場合には、医師にそのことをすべて伝えるようにしましょう。

  3. (3)一貫性のある説明をする

    むちうち症の症状を説明する際に、一貫性のない主張をしていると、むちうち症が嘘ではないかと疑われるおそれがあります。

    たとえば、最初は首が痛いと言っていたにもかかわらず、次の受診では肩が痛いなど、症状に一貫性がない場合には、むちうち症の真偽を疑われても仕方ありません。
    そのため、医師に対して症状を説明する際には、最初から最後まで一貫性のある説明をすることが大切です。

  4. (4)定期的に通院を行う

    通院を続けているうちに徐々に症状が緩和されていきますが、医師が治療の終了を判断するまでは、定期的に通院をするようにしましょう。

    医師の判断がないにもかかわらず、勝手に通院頻度を減らしてしまったり、通院を中断してしまったりすると、「そもそも治療をする必要がなかったのでは」「事故とは関係のない怪我での通院ではないのか」という疑いを抱かれてしまうおそれがあります。

    途中で通院を止めてしまうと、症状が悪化するおそれもありますので、症状が残っているのであれば定期的に通院を行いましょう。

  5. (5)必要な検査を受ける

    むちうち症は、レントゲンやMRIなどの画像所見での異常がないことが多いため、それ以上の検査を行わないことがあります。

    しかし、他覚所見のないむちうち症であっても、ジャクソンテストやスパーリングテストといった神経学的検査を受けることにより、むちうち症を裏付ける証拠にすることが可能です。被害者から医師に相談をすれば、神経学的検査を実施してくれますので、積極的に活用するようにしましょう。

3、むちうち症の申告が嘘だった場合は保険金詐欺にあたる

ここからは、むちうち症でないにもかかわらず、嘘の申告をしてしまったときのリスクについて解説します。

  1. (1)保険会社から賠償金が支払われない

    むちうち症が嘘の申告であった場合には、本当であれば病院への通院が必要なかったことになります。そうなれば、事故との因果関係は否定されることになるため、保険会社からは治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料といった交通事故に関する賠償金は一切支払われません。

    また、保険会社の一括対応により病院への治療費が支払われていたケースでは、本来は支払う必要のなかったお金であるため、被害者に対して返還請求がなされます。

  2. (2)保険金詐欺にあたる可能性もある

    交通事故でむちうち症になっていないにもかかわらず、嘘の申告をして保険会社から保険金をだまし取る行為は、保険金詐欺にあたります。また、実際にむちうち症だったとしても、症状が治ったのに痛みを訴えて治療を続けることは保険金の水増し請求となるため、同様に保険金詐欺にあたる可能性があるでしょう。

    このような保険金詐欺に該当する行為が立件され、有罪となった場合には、10年以下の懲役に処せられます。保険金詐欺は、非常に重い犯罪ですので、嘘の申告をするのは絶対にやめましょう。

4、交通事故の被害を弁護士に相談するべき理由

交通事故の被害にあった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)治療中の不安を解消できる

    交通事故の治療をしていると、以下のような不安や悩みが生じることが少なくありません。

    • 今の病院は自宅から遠いから、近くの病院に転院したい
    • 会社を休んだ分の補償はしてくれるのだろうか
    • 通院を続けているが、このまま症状が改善しないとどうなるのだろうか
    • 保険会社から自分にも事故の落ち度があると言われている


    多くの方が交通事故に遭うのは初めての経験になりますので、このような不安や悩みが生じたとしても、どのように解決すればよいかわからないことが多いでしょう。
    交通事故の事案に関する豊富な知識・経験を有している弁護士であれば、このような不安や悩みについて、適切な解決方法を示すことができます。

  2. (2)保険会社との交渉を任せることができる

    交通事故の事案を弁護士に依頼すれば、面倒な保険会社との交渉をすべて弁護士に任せることが可能です。

    保険会社の担当者は、業務として多くの事案を処理していますので、被害者と比べると情報量や交渉力に圧倒的な優位性があります。このような保険会社の担当者を相手に、有利な条件での示談をまとめるのは、非常に困難といえるでしょう。

    弁護士であれば、豊富な知識と経験に基づいて、保険会社の担当者が相手であっても対等な立場で交渉を進めていくことができます。
    また、すべての交渉の窓口を弁護士にすることにより、保険会社とのやり取りを行うストレスも軽減することが可能です。

  3. (3)慰謝料を増額できる可能性がある

    交通事故の慰謝料算定には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準(弁護士基準)という3つの基準があります。

    この3つの基準のなかでは、裁判所基準がもっとも高額な慰謝料となる基準ですが、裁判所基準を示談交渉で利用することができるのは、弁護士に依頼した場合に限られる点に注意が必要です。
    つまり、少しでも多くの慰謝料を獲得したいという場合には、弁護士への依頼が不可欠となります。

5、まとめ

交通事故によるむちうち症は、被害者の自覚症状しか裏付けるものがないため、事故後の対応によっては、保険会社から嘘ではないかと疑われることがあります。

事故後の対応を誤ると、適切な賠償金を受け取ることができなくなる可能性もあるため、注意しましょう。また、そのような事態を避けるには、早い段階で弁護士に相談することが重要です。

交通事故の被害に遭ってお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています