後ろから追突されたときの過失割合や賠償金はどうなるのかを解説

2023年08月14日
  • その他
  • 後ろから追突
後ろから追突されたときの過失割合や賠償金はどうなるのかを解説

和歌山県警察が公表している「和歌山県内の交通事故概況(令和4年中)」の資料によると、令和4年に発生した交通事故は1389件で、そのうち追突事故は408件ありました。追突事故は、全体の約3割を占めており、よくある事故類型といえます。

信号待ちや渋滞などで停車している際に後ろから追突される事故は、全国の交通事故全体でも上位を占める事故類型です。突然に後ろから追突されるケースは、加害者のみが責任を負う0対100の事故となりますが、事案によっては、被害者にも過失割合が生じることがあります。

本コラムでは、交通事故のうち、後ろから追突されたときの過失割合や賠償金について、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。

1、後ろから追突されたときの過失割合は0対100?

まず、後ろから追突されたときの過失割合はどうなるのかを解説します。

  1. (1)後ろから追突された場合の過失割合は、原則として0対100

    後ろから追突されるというのは、交通事故でもよくみられる事故類型のひとつです。
    このような追突事故では、後ろから追突された被害者に過失はなく、追突した加害者の一方的な過失となります。

    なぜなら、後続車両には、前方の車両が急停止しても追突を避けられるように十分な車間距離を保つ義務がありますので(道路交通法26条)、追突したということは、車間距離不保持というルール違反が認められるからです。他にも前方不注視(道路交通法70条)が理由の場合もあります。

    したがって、後ろから追突された事故では、過失割合は「被害者:加害者=0:100」となります。

  2. (2)追突事故で過失割合が0対100にならないケース

    後ろから追突された事故では、基本的には0対100の過失割合です。しかし、追突された被害者にも落ち度があるようなケースでは、被害者に過失が認められる可能性があります。
    追突事故で過失割合が0対100にならないケースとしては、以下のような場合です。

    ① 前方車両が急ブレーキを踏んだケース
    道路交通法24条では、危険を防止するためにやむを得ない場合を除いて急ブレーキをかけてはならないと定めています。そのため、被害者が理由のない急ブレーキをかけたことにより追突事故が発生した場合には、被害者にも30%の過失が認められる可能性があります。

    ② 前方車両が駐停車禁止場所に停車していたケース
    道路交通法44条1項では、以下のような場所での駐停車を禁止しています。

    • トンネル
    • カーブの途中
    • 道路の曲がり角
    • 坂道


    これらの場所に駐停車していたことにより追突事故が発生した場合には、後ろから追突された被害者にも10%の過失が生じる可能性があります。

    ③ 前方車両のブレーキランプが故障していたケース
    前方車両のブレーキランプが故障していた場合には、後続車両は危険を察知しにくくなります。このような場合は、追突事故が生じたときは被害者側に10~20%の過失が認められる可能性があります。

2、後ろから追突されたときの賠償金

後ろから追突された場合には、被害者は、どのような賠償金を請求することができるのでしょうか。ここからは、むちうちなどの負傷の有無に分けて説明します。

  1. (1)むちうちなどの負傷がある場合(人身事故)

    後ろから追突されたことにより、被害者がむちうちなどの負傷をした場合には、以下のような損害を請求することができます。

    ① 治療費
    怪我の治療のためにかかった治療費については、必要かつ相当な実費全額が損害です。整形外科などの病院での治療費以外にも、整骨院などの施術費も一定の要件で損害と認められます。

    ② 通院交通費
    通院のために公共交通機関を利用した場合には運賃料、自家用車を利用した場合にはガソリン代(1kmあたり15円)が損害として請求可能です。
    タクシー代については、公共交通機関を利用できない事情がある場合に認められます。

    ③ 休業損害
    事故の治療などで会社を休んだ場合には、収入の減少が生じますが、そのような減収分は休業損害として請求することが可能です。
    なお、休業損害は会社員だけでなく、現実の収入のない専業主婦でも認められます。

    ④ 慰謝料
    交通事故による精神的苦痛に対しては、慰謝料が支払われます。
    慰謝料には、怪我をしたことに対する「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」と、後遺障害が生じたことに対する「後遺障害慰謝料」の2種類があります。

    ⑤ 逸失利益
    交通事故により後遺障害が生じた場合には、労働能力の低下により将来にわたって収入の減少が生じてしまいます。そのような将来の減収分については、逸失利益として請求することが可能です。
  2. (2)負傷がない場合(物損事故)

    車で後ろから追突されたものの、被害者に怪我がなかったケースでは、以下のような損害を請求することができます。

    ① 車の修理費
    追突事故により車が損壊した場合には、修理費相当額が損害として認められます。
    車の修理費が車の時価相当額を上回っている場合には、経済的全損として時価相当額が損害となります。

    ② 代車使用料
    事故によって自分の車が使えずにレンタカーを利用した場合には、必要かつ相当な範囲の代車使用料が損害として認められます。

    ③ 評価損
    評価損とは、事故前の車両価額と修理後の車両価額の差額のことです。評価損は、常に認められるものではありませんが、事故によって損壊した車が新車であったり、高級車であったりする場合には認められる可能性があります。

    ④ 休車損
    事故によって損壊した車が営業車(タクシー、バス、トラックなど)であった場合には、修理のために使用できず営業利益が減少することがあります。そのような営業利益の減少分は、休車損として請求することが可能です。

3、慰謝料を受け取るまでの注意点

後ろから追突されて怪我をした場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。適正な慰謝料を受け取るためにも、注意すべきことを確認しておきましょう。

  1. (1)事故後には必ず病院に行く

    交通事故の直後は神経が興奮していて、怪我に気付かないことが多くあります。怪我はしていないと思ったとしても、まずは病院に行くようにしましょう。

    事故から時間が経過し、痛みに気付いて病院を受診したとしても、事故との因果関係を否定されてしまい、治療費や慰謝料などの支払いを受けることができない可能性があります。そのため、事故後は必ず病院を受診してください。

  2. (2)通院を途中でやめない

    治療のための通院によって仕事や日常生活に支障が生じるからといって、症状が改善してくると、自分の判断で勝手に治療をやめてしまう方もいます。

    しかし、医師から完治または症状固定(それ以上治療をしても症状の改善が見込めない状態)の判断が出るまでは、治療を途中でやめてはいけません。必要な治療を途中でやめてしまうと、症状が再発するリスクだけでなく、後遺症があったとしても後遺障害等級認定を受けられなくなるリスクがあります。

    通院日数や通院期間は慰謝料額にも影響してきますので、適切な頻度で通院を継続することが大切です。

  3. (3)適切な後遺障害等級認定を受ける

    事故による怪我の内容や程度によっては、治療を継続したとしても症状が改善せず、後遺症が生じてしまうことがあります。症状固定時点で存在する後遺症については、後遺障害等級認定を受けることによって、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することが可能です。

    後遺障害等級認定にあたっては、医師が作成する後遺障害診断書やMRI・CTなどの検査結果が重視されます。適切な後遺障害等級認定を受けるためにも、過不足ない書類を準備することが大切です。

4、追突事故の被害を弁護士に相談するべき理由

追突事故の被害に遭われた方は、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)保険会社との対応を任せられる

    交通事故の被害に遭ったら、事故直後から加害者の保険会社との間でさまざまなやり取りをしていかなければなりません。

    怪我の治療や仕事・家事に追われている状況で保険会社とのやり取りもしなければならないのは、大きな負担となります。ご自身の負担を少しでも軽減するためにも、交通事故の対応は弁護士にお任せください。

    弁護士であれば、被害者の方に代わって保険会社と交渉をすることができます。それにより、精神的な負担は大幅に軽減されるでしょう。

  2. (2)慰謝料を増額できる可能性がある

    慰謝料の算定基準には、自賠責保険基準・任意保険基準・裁判所基準の3つの基準があります。

    この3つの基準の中では、裁判所基準がもっとも慰謝料の金額が高くなる基準ですが、裁判所基準を用いて示談交渉を行うことができるのは、弁護士に依頼した場合に限られます。

    すなわち、弁護士に依頼をすることで慰謝料額を増額できる可能性があるのです。少しでも多くの慰謝料を支払ってもらいたいという方は、弁護士へ依頼するようにしましょう。

  3. (3)適切な後遺障害等級が認定される可能性が高くなる

    後遺障害等級認定の手続きには、被害者がすべて行う被害者請求と加害者の保険会社がすべて行う事前認定の2つの方法があります。

    事前認定の方が被害者にとっては手続き的な負担もなく楽な方法といえますが、賠償金を支払う保険会社任せにしていると、適切な後遺障害等級認定は期待できません。適切な後遺障害等級認定を受けるためには、自分で必要な資料を収集し、提出できる被害者請求の方法で行う必要があります。しかし、全てを自分で行うのは相当な手間がかかり、大きな負担となります。

    弁護士に依頼をすれば、被害者請求の手続きをサポートしてもらうことができますので、被害者自身の手続き的な負担はほとんどないでしょう。

5、まとめ

後ろから追突されるという事故類型は、交通事故全体でも上位を占める事故です。
基本的には、被害者に過失は生じませんが、事故の発生に被害者も関与していたケースでは、一定の過失割合が生じる可能性があります。

交通事故の賠償金は、弁護士のサポートにより増額できる可能性があるため、交通事故の被害に遭われた方は、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスまでお気軽にご相談ください。

知見のある弁護士が親身になりながら、問題解決に向けてサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています