横から突っ込まれる事故に遭った! 過失割合の考え方と適切な補償
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和歌山県警察が公表する「令和4年中 和歌山県の交通事故概況」によると、令和4年に和歌山県内で発生した交通事故は1389件で、死者は24名、負傷者は1649名でした。
直線走行中または停車中の車に、別の車が横から突っ込む交通事故を「側面衝突」といいます。側面衝突の場合、横から突っ込まれた側には交通事故の過失がないと思われるかもしれません。しかし、実際には事故の状況により、横から突っ込まれた側にも過失が認められる場合があるので注意が必要です。
今回は、側面衝突の交通事故の過失割合や、適切な損害賠償を得るための対応などをベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。
1、過失割合とは
過失割合とは、不法行為(民法第709条)の当事者間において、どちらにどれだけの責任があるのかを示した割合です。
交通事故において、いずれか一方の当事者のみに過失がある場合、過失割合は「10対0」となります。
一方、事故当事者の双方に過失がある場合は、注意義務違反の程度が重大な側により大きな過失割合が認められます(例:9対1、8対2など)。
交通事故の過失割合は、損害賠償の金額に大きく影響するものです。
たとえばA車とB車の交通事故において、A車側だけに300万円の損害が生じたケースを考えてみましょう。B車だけに交通事故の過失がある場合、A車の運転手はB車の運転手に対して、300万円全額の損害賠償請求が可能です。
これに対して、仮にA車に2割、B車に8割の過失が認められるとした場合、損害賠償について過失相殺(民法第722条第2項)が行われます。その結果、A車の運転手はB車の運転手に対して、240万円(=300万円×80%)の損害賠償を請求できるにとどまるのです。
このように、過失割合は交通事故の損害賠償額に大きな影響を及ぼすため、適正な過失割合に基づく請求を行うようにしましょう。
2、停車中に側面衝突されたときの過失割合
側面衝突の交通事故につき、横から突っ込まれた側が停車中であった場合と、走行中であった場合のそれぞれに係る基本過失割合を解説します。
なお、交通事故に関する具体的な事情によっては、基本過失割合が修正される場合もある点にご留意ください(例:スピード違反、車線変更禁止違反、酒気帯び運転など)。
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(1)停車中の事故の過失割合は、原則として10対0
横から突っ込まれた側が停車中であった場合、基本過失割合は突っ込んだ側が10割、横から突っ込まれた側が0割(=10対0)です。
車両等の運転者は、ハンドルやブレーキなどの装置を確実に操作し、道路・交通・車両等の状況に応じて、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければなりません(道路交通法第70条)。これを「安全運転義務」といいます。
走行中の車は停車中の車よりも、他人に危害を及ぼすリスクが高いです。そのため、走行中の車の運転者には、停車中の車の運転者よりも高度な安全運転義務が課されます。
その一方で、停車中の車の運転者にも安全運転義務はあります。しかし、適切な位置・条件で停車している限りは、車を避ける注意義務までは基本的には負いません。
このような理由から、側面衝突の交通事故において、横から突っ込まれた側が停車中であった場合の基本過失割合は10対0とされています。しかし、停車中の車にも落ち度がある場合には、以下のように、停車中の車にも過失割合が認められます。 -
(2)停車中の車にも過失が認められる場合の例
不適切な位置・条件で停車していた場合には、横から突っ込まれた側にも過失が認められることがあります。
<横から突っ込まれた側にも過失が認められる可能性が高いケース>- ① 駐停車禁止の標識に違反して停車していた(道路交通法第44条第1項)
- ② 以下の位置に停車していた(同法)
- 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂またはトンネル
- 交差点の側端または道路の曲がり角から5メートル以内の部分
- 横断歩道または自転車横断帯の前後の側端から、それぞれ前後に5メートル以内の部分
- 安全地帯の左側の部分およびその前後の側端から、それぞれ前後に10メートル以内の部分
- バス停の表示柱の位置から10メートル以内の部分(運行時間中に限る)
- 踏切の前後の側端から、それぞれ前後に10メートル以内の部分
3、走行中に側面衝突されたときの過失割合
側面衝突の交通事故において、横から突っ込まれた側が走行中であった場合の基本過失割合を、信号機がある場合とない場合に分けて解説します。
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(1)信号機のある交差点における側面衝突の過失割合
信号機のある交差点において側面衝突が発生した場合、信号パターン別の基本過失割合は以下のとおりです。
信号パターン 基本過失割合 青信号と赤信号 青信号車:0割
赤信号車:10割青信号と青信号 直進車:2割
右折車:8割黄信号と黄信号 直進車:4割
右折車:6割 -
(2)信号機のない交差点における側面衝突の過失割合
信号機のない交差点において側面衝突が発生した場合、道路状況別の基本過失割合は以下のとおりです。
道路状況 基本過失割合 同じ道幅 左側の車:4割
右側の車:6割
※左方優先のルールいずれか一方の道路が明らかに広い 広い道路側の車:3割
狭い道路側の車:7割いずれか一方の道路に一時停止規制 一時停止義務車:8割
他方車:2割
いずれか一方が優先道路 優先車:9割
劣後車:1割
4、交通事故について、適切な損害賠償を受けるためにすべきこと
交通事故によって生じた被害につき、相手方から適切な損害賠償を受けるためには、以下の各点に十分留意の上でご対応ください。
- ① 相手方保険会社の言いなりにならない
- ② 事故直後から通院を継続する
- ③ 弁護士に相談する
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(1)相手方保険会社の言いなりにならない
交通事故の相手方が任意保険に加入していた場合、示談交渉は任意保険会社との間で行います。
任意保険会社は支払う保険金額を抑えるため、適正な水準よりも低い金額の保険金を提示するケースが大半です。具体的には、保険金額に含めるべき損害が含まれていない、損害額の算定に独自の基準(=任意保険基準)が用いられているといったケースが挙げられます。
交通事故の被害者としては、相手方保険会社の言いなりにならず、法的な観点から適正な損害額を計算することが大切です。また、示談書の早期締結を求められても、その場で応じることなく、必ず持ち帰って慎重に検討しましょう。 -
(2)事故直後から通院を継続する
交通事故の損害賠償請求を見据えると、事故に遭ったらすぐに通院を開始することが大切です。通院開始が遅れると、ケガや後遺症と交通事故の因果関係を証明しにくくなり、損害賠償が減額または認められなくなってしまうおそれがあります。
また、ご自身の判断で通院をやめずに、主治医の指示に従って通院を継続することも重要です。事故直後から完治または症状固定まで通院を継続すれば、ケガや後遺症の状況を証明する際、主治医の診断書が非常に有力な証拠となります。
さらに入院・通院の日数は、相手方に請求できる入通院慰謝料の金額にも影響するものです。主治医の指示に従ってきちんと通院すれば、相手方に対して多額の入通院慰謝料を請求できる可能性があります。
このように、交通事故の直後から通院を継続することは非常に重要です。ケガをできる限り完治に近づけるため、また適正額の損害賠償を獲得するため、主治医の指示に従って定期的に通院しましょう。 -
(3)弁護士に相談する
交通事故の損害賠償請求は、弁護士に依頼することで増額が期待できます。
弁護士は、交通事故と因果関係のある損害を積算した上で、漏れのないように損害賠償請求を行います。ご本人が気づきにくい損害についても、弁護士が丁寧なヒアリングを経て見つけ出します。
また弁護士は、保険会社の独自基準である任意保険基準ではなく、過去の裁判例に基づく「裁判所基準(弁護士基準)」に基づき損害賠償を請求することが可能です。被害者は本来、裁判所基準による損害賠償を受ける権利があります。裁判所基準による損害賠償額は、任意保険基準に比べてはるかに高額です。
弁護士が法的な観点から説得的な主張・立証を行うことにより、裁判所基準による損害賠償を獲得できる可能性が高まります。
交通事故の損害賠償請求は、お早めに弁護士へご相談ください。
5、まとめ
別の車に横から突っ込まれる側面衝突の交通事故では、信号その他の道路状況によって基本過失割合が決まります。ただし具体的な事情によっては、基本過失割合が修正される場合があることに注意が必要です。
過失割合は、交通事故の損害賠償額に大きな影響を及ぼします。適正額の損害賠償を獲得するには、事故状況に応じた正しい過失割合に基づく請求をすることが大切です。
ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスは、交通事故の損害賠償請求に関するご相談を随時受け付けております。追突事故や側面衝突事故など事故の状況に応じて、損害額や過失割合に関する主張を適切に組み立て、適正額の損害賠償を請求いたします。
交通事故の被害に遭ってしまったら、損害賠償請求に関する方針決定や準備などについて、お早めにベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています