家族が交通事故の後日に死亡したら|遺族が請求できるものと手続き
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和歌山県警察が公表する「和歌山県の交通事故概況(令和3年中)」によると、令和3年に和歌山県内で発生した交通事故件数は、1419件でした。交通事故の発生件数は、平成14年以降20年連続で減少しているようですが、前年よりも13名多い31名の方が亡くなっています。
大切な家族が交通事故によって死亡してしまった場合、残された家族が抱く悲しみの大きさは、言葉で言い表すことができないほどのものです。そのような状況にあるにもかかわらず、家族が交通事故に遭った後日に亡くなられた場合には、遺族の方が葬儀関係や相続関係、賠償関係など、さまざまな手続きを行わなければなりません。
今回は、遺族の方の負担を少しでも軽減することができるように、家族が交通事故に遭ったその後日に死亡したときの手続きや、加害者相手に請求できるものなどについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故後に治療の末、亡くなられたときの手続き
家族が交通事故の後日に死亡してしまった場合に、必要となる手続きを4つに分けて紹介します。
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(1)葬儀の手配
病院からご遺体を受け取り、その後は通夜や葬儀の手配を行いましょう。
葬儀の流れは宗派や地域によって異なるところもありますが、一般的な流れとしては、納棺の翌日の夜に通夜を行い、通夜の翌日に葬儀を行います。葬儀が終了したのち、火葬、納骨、精進落としを行います。
葬儀までには、短期間でさまざまな手続きを行わなければなりませんので、葬儀会社のサポートを受けながら、漏れのないように進めていきましょう。 -
(2)加害者との示談交渉
交通事故の怪我が原因となって後日死亡した場合には、死亡による損害を加害者に請求していきます。通常、加害者は任意保険に加入しているため、まずは加害者側の保険会社に連絡をして示談交渉を行うことが必要です。
連絡を取ったあと、保険会社から提示された示談の提案に納得ができないという場合には、裁判で争うことになります。
訴訟手続きは、専門的な知識や経験がなければ適切な賠償額を獲得することが難しいものです。裁判で争う必要があるときは、弁護士に依頼することをおすすめします。 -
(3)相続手続き
交通事故後に死亡してしまった場合には、故人の遺産を対象とした相続が発生します。そのため、故人の法定相続人による相続手続きが必要です。
遺産相続では、故人の財産だけではなく故人が有していた権利も引き継ぎますので、交通事故の損害賠償請求権も法定相続人が相続します。そのため、加害者への損害賠償請求は、故人の法定相続人が行っていくことになります。 -
(4)刑事事件の対応
交通事故の加害者に対して厳しい処罰を望む場合には、刑事裁判における被害者参加制度の利用を検討しましょう。
被害者参加制度とは、被害者またはその遺族の方が加害者の刑事手続きに参加をし、加害者(被告人)や証人への質問、刑の適用や心情に関する意見を述べることができる制度です。
加害者や裁判官の面前で被害感情を直接伝えることによって、遺族の苦しい気持ちが多少は和らぐこともあるでしょう。
2、死亡事故となったとき、加害者側に請求できるもの
交通事故の後日に死亡した場合には、加害者に対して、以下のような請求をすることが考えられます。
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(1)亡くなるまでの医療費
被害者が交通事故によって入院し、後日死亡した場合には、交通事故から死亡までに要した入院費用や治療費を請求することが可能です。
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(2)葬儀費用
交通事故によって被害者が死亡した場合には、通夜、葬儀、火葬などの葬儀費用についても加害者に請求することができます。葬儀費用の金額としては、自賠責基準では一律100万円が支給され、裁判所基準(弁護士基準)では、150万円を上限として、実際に支払った実費分が支払われます。
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(3)慰謝料
交通事故の後日に亡くなった場合の慰謝料としては、以下の3つの慰謝料を請求することが可能です。
① 傷害慰謝料(入通院慰謝料)
交通事故によって入院をして、後日死亡したという場合には、入院によって被った精神的苦痛に対する傷害慰謝料を請求することができます。傷害慰謝料の金額は、入院期間や日数に応じて計算をするため、即死の場合には請求できません。
② 被害者本人の死亡慰謝料
被害者本人は、交通事故によって死亡という重大な結果に至らしめられたことになります。このことに対しては、死亡慰謝料が発生します。
被害者本人に発生する慰謝料ですが、被害者本人はすでに亡くなっていますので、被害者本人の死亡慰謝料の請求は、被害者の相続人が行わなければなりません。
③ 被害者遺族の慰謝料
被害者の遺族は、大切な家族を奪われたことによって多大な精神的苦痛を被ります。交通事故の直接の被害者ではありませんが、被害者の遺族も加害者に対して、固有の慰謝料を請求することができます。
慰謝料を請求することができる遺族としては、被害者の父母、配偶者、子どもとされていますが(民法711条)、兄弟姉妹であっても、近親者と同視し得るような関係性が認められる場合には慰謝料請求が可能です。 -
(4)死亡逸失利益
交通事故で被害者が死亡すると、被害者が将来得られていたはずの収入が失われます。このような将来得られるはずの収入については、死亡逸失利益として請求することが可能です。
死亡逸失利益は、事故当時の被害者の年収、家族関係、年齢などを考慮して、以下のような計算式で計算をします。基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
ライプニッツ係数とは、逸失利益を算出するときに用いる指数です。民法によって定められた法定利率をもとに決められています。
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(5)謝罪
大切な家族を奪われた遺族の方としては、加害者に対して謝罪をしてほしいと考えることもあるでしょう。
保険会社が間に入っている場合には、ほとんどすべての対応を被害者遺族と保険会社との間で行われるため、加害者からの謝罪や誠意ある対応がないと感じる方も少なくありません。
このような場合には、加害者に対して謝罪を求めることもできます。
しかし、謝罪を求める法的権利や謝罪に応じる義務が加害者にあるわけではありません。そのため、相手が謝罪に応じるかどうかは、加害者の倫理観に委ねられることになります。
3、「交通事故と死亡は関係がない」と言われたときの対応方法
交通事故の後日、被害者が亡くなった際に「交通事故と死亡したことには関係がない」と言われることがあります。このような場合に備えて、以下のような対応が必要です。
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(1)死亡診断書の確認
交通事故の被害者が死亡した場合には、病院で死亡診断書が作成されます。
死亡診断書には、「死亡の原因」や「死亡の種類」という項目がありますので、記載内容によっては、交通事故と死亡との因果関係を立証する有力な証拠となるでしょう。
たとえば、死亡の原因として交通事故に起因する傷病名が記載されていたり、死亡の種類として交通事故が選択されていたりする場合には、因果関係を立証する証拠となります。 -
(2)病理解剖の検討
交通事故の被害者の方が、肺炎などの別の病気によって後日亡くなった場合には、死亡診断書に交通事故と死亡との因果関係を立証する記載がないことがあります。
この場合、後になって「交通事故と死亡したことに関係がない」と言われる可能性があります。
そのような事態に備え、病理解剖の実施を検討しましょう。直接の死因が病気なのか交通事故による外傷なのかを判別することができる可能性があるでしょう。
ただし、病理解剖では、亡くなった方の身体に傷をつけることになりますので、他の遺族の心情にも配慮して慎重に進めていくことが大切です。 -
(3)意見書の作成依頼
被害者の治療を担当していた医師に、交通事故と死亡との因果関係に関する意見書を作成してもらうことも有力な証拠となります。
意見書の作成は、医師の協力が必要不可欠であるため、まずは医師に相談をしてみるとよいでしょう。
4、できるだけ早期に弁護士へ相談したほうがよい理由
交通事故によってご家族が死亡してしまった場合には、できるだけ早期に弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)交通事故の交渉を任せることができる
交通事故によって大切な家族を失ってしまうと、気が動転してしまい、普段どおりに行動することができなくなってしまいます。そのような状況のなかで、通夜や葬儀、相続手続きなどを進めていかなければならないのは、非常に大きな負担です。
弁護士であれば、被害者遺族の代理人として、交通事故の加害者や保険会社との交渉を担当することができます。
遺族の方の精神的な負担や手続きなどの負担は、弁護士に依頼することで大幅に軽減されるといえるでしょう。 -
(2)賠償額の増額が期待できる
死亡事故の示談交渉は、一般的に四十九日を過ぎた頃から始められることが多いです。
しかし、まだ事故から間もない時期では、被害者遺族の方も混乱していることが多く、保険会社から提示された示談案が適正なものであるかどうかを判断することができないまま、示談に応じてしまう場合もあるでしょう。
交通事故の賠償額は、弁護士が間に入って交渉をすることによって、増額できる可能性があります。特に、交通死亡事故の場合には、賠償額も高額になりますので、弁護士が間に入ることによって増額できる金額も大きくなる傾向があります。
残された家族が経済的に不安なく生活をしていくためには、適正な賠償額を獲得することが非常に重要です。そのためには、弁護士のサポートが不可欠となりますので、早めに弁護士に相談をするようにしましょう。
5、まとめ
交通事故によって家族を失うというのは、言葉にならないほどに、大変つらく悲しいことです。
そのような状況で示談交渉をしなければならず、精神的にも対応が困難な場合には、まずは弁護士にご相談ください。弁護士であれば、加害者や保険会社と交渉を行い、適正な内容で示談を成立させるためのサポートをすることができます。
交通事故によって大切な家族を失ってしまったという方は、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスまでご相談ください。お気持ちに寄り添いながら、解決に向けて尽力いたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています