10対0の物損事故、示談金はもらえる? 請求できるお金はなに?

2023年05月23日
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10対0の物損事故、示談金はもらえる? 請求できるお金はなに?

和歌山県警察が公表する「令和4年中 和歌山県の交通事故概況」のデータによると、和歌山県で発生した交通事故は年々減少傾向にあり、令和4年における件数は1389件でした。

年々減少しているとはいえ、交通事故にはご注意ください。もし、過失割合10対0の物損事故が発生した場合は、修理費・代車費用・車の評価損などの総額に相当する示談金を請求できます。ただし過失割合10対0の場合、ご自身が加入している任意保険の示談交渉代行サービスは利用できないため、弁護士にご相談ください。

本コラムでは、物損事故における示談金の内訳や、過失割合10対0の場合における示談交渉時の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。

1、過失割合10対0の物損事故における示談金

過失割合10対0の物損事故では、物的損害の全額が損害賠償の対象となります。被害者と加害者(または任意保険会社)が示談をする際にも、基本的には物的損害の全額を示談金に反映するべきです。まずは、基本的な言葉の意味を解説していきます。

  1. (1)物損事故とは

    物損事故とは、当事者のいずれもケガをしていない交通事故のことです。

    物損事故の場合、人身事故とは異なり、治療費や慰謝料など人的損害に関する損害賠償は発生しません。損害賠償の対象となるのは、修理費・買い替え費用・代車費用・評価損・休車損害などの物的損害に限られます。

  2. (2)示談金とは

    示談金とは、交通事故に限らず、法律トラブルのあった当事者の間で、解決の証として授受される金銭です。

    交通事故においては、被害者と加害者(または任意保険会社)の間で、損害賠償に関する示談交渉が行われるケースが多くあります。示談がまとまれば、加害者側から被害者に対して示談金(または保険金)が支払われます。

    示談金は損害賠償の代わりとして支払われるため、示談金額は損害賠償の対象金額に準じて決めるのが適切です。

  3. (3)過失割合とは

    過失割合とは、法律トラブルのあった当事者の間で、どちらにどの程度責任(過失)があるのかを示す割合です。

    たとえば、駐車場での当て逃げや信号待ち中の追突事故などでは、加害者側に100%の責任が認められます。この場合、過失割合は「10対0」です。

    これに対して、信号のない交差点での交通事故などでは、当事者の双方に過失が認められるケースが多くあります。この場合、過失割合は「9対1」「8対2」「7対3」「6対4」「5対5」などのように、事故の状況に応じて異なります。

    過失割合は、交通事故の損害賠償の金額に影響します。

    たとえば過失割合が10対0であれば、加害者は被害者に生じた損害の全額を賠償しなければなりません。これに対して、過失割合が8対2であれば、加害者が負う損害賠償責任は、被害者に生じた損害額の8割にとどまります(過失相殺)。

  4. (4)過失割合10対0の物損事故では、物的損害の全額が示談金の対象

    過失割合10対0の物損事故においては、過失相殺が行われません。そのため、被害者に生じた物的損害の全額が損害賠償の対象となります。

    示談金額を決める際にも、基本的には被害者に生じた客観的損害の全額を反映するべきです。したがって、物的損害の総額と同等か、それに近い金額で示談をすることが望ましいでしょう。

2、物損事故における示談金の内訳

物損事故の示談金に含めるべき以下の損害項目について、詳しく見ていきましょう。

  • ① 修理費・買い替え費用
  • ② 代車費用
  • ③ 車の評価損
  • ④ 休車損害


  1. (1)修理費・買い替え費用

    物損事故によって破損した車の修理費は、合理的な範囲内であれば全額が損害賠償の対象です。

    ただし、修理費が事故当時の車の市場価格を上回る場合は、買い替え費用に当たる当該市場価格の範囲内でしか修理費の損害賠償が認められない点にご注意ください。

  2. (2)代車費用

    物損事故によって車が使えなくなり、修理が終わるまでの間に代車を借りた場合には、代車の使用料が損害賠償の対象となります。

    ただし、事故車に比べてグレードの高い車を代車として借りた場合には、使用料の一部が損害賠償の対象外とされる可能性があることに注意が必要です。

  3. (3)車の評価損

    過去に事故に遭ったことのある車(事故車)の中古車市場における評価額は、無事故車の相場額に比べて低下するのが一般的です。これを「評価損」といいます。

    評価損についても、交通事故と相当因果関係があると認められる範囲で、損害賠償の対象となります。

  4. (4)休車損害

    タクシーなどの営業車については、物損事故によって稼働が不可能となった場合、営業上の逸失利益に相当する「休車損害」が損害賠償の対象です。

    休車損害の金額は、平常時の売り上げ・利益などを考慮して計算されます。

3、過失割合10対0の物損事故における示談交渉の注意点

過失割合が10対0の物損事故について、加害者(または任意保険会社)との間で示談交渉を行う際には、以下の各点にご留意の上でご対応ください。

  • ① 保険会社の示談交渉代行サービスは利用できない
  • ② 気づかないうちにケガをしている場合がある
  • ③ 保険会社が被害者の過失を主張してくることがある


  1. (1)保険会社の示談交渉代行サービスは利用できない

    自動車保険には、示談交渉代行サービスが付帯されているケースがあります。

    しかし、過失割合10対0の交通事故について、ご自身に全く過失がない場合には、保険会社の示談交渉代行サービスを利用することはできません。
    保険金の支払い義務を負わない保険会社が、被害者のために業として示談交渉を行うことは、「非弁行為」という違法行為に当たるからです(弁護士法第72条第1項)。

    過失割合10対0の交通事故に関する示談交渉は、弁護士にご依頼ください。弁護士は、被害者に生じた客観的な損害額を見積もった上で、加害者側から適正額の損害賠償を獲得できるようにサポートいたします。

  2. (2)気づかないうちにケガをしている場合がある

    交通事故直後の段階ではケガがないように思えても、後から身体が痛み出し、ケガをしていたことが判明するケースがあります。

    通院の開始が遅れると、交通事故とケガの因果関係が不明確になり、損害賠償請求が認められなくなるおそれがあることに注意しましょう。

    また、警察に対する人身事故の届け出が遅れると、人身事故としての交通事故証明書の発行が受けられない、事故現場の実況見分が行われないなど、後の損害賠償請求との関係で不利益に働く可能性が高いです。

    このような事態を防ぐため、事故直後の段階では無傷に思えたとしても、念のため必ず医療機関を受診してください。早い段階でケガが発見されれば、治療・損害賠償請求の両面で相手に責任を追及できる可能性が高いでしょう。

  3. (3)保険会社が被害者の過失を主張してくることがある

    明らかに被害者に過失がないと思われる場合でも、加害者側の任意保険会社は、被害者側に何らかの過失があることを主張してくるケースがあります。

    過失割合の点で譲歩すると、加害者側に請求できる損害賠償の金額が大きく減ることになってしまうため、加害者側の主張に理不尽な点があれば、徹底的に反論しましょう。

    弁護士に相談することで、加害者側の主張の理不尽な点を厳しく追及し、適正額の損害賠償を得られるようなサポートを受けることが可能です。

4、交通事故の示談交渉は弁護士にご相談を

過失割合10対0の物損事故では、自動車保険の示談交渉代行サービスを利用することができません。

被害者が自力で示談交渉を行うのは大変なことであり、加害者側の提示する示談金額が合理的であるかどうか、判断が難しい部分もあるでしょう。そのため、交通事故に遭った際は、弁護士にアドバイスを求めることがおすすめです。

弁護士は、交通事故によって被害者に生じた客観的な損害を漏れなく把握し、その全額を回収できるようにサポートすることができます。また、加害者側との示談交渉や損害賠償請求訴訟の手続きを全面的に代行し、被害者のご負担を軽減いたします。

弁護士を通じて法的根拠に基づく主張・反論を行うことにより、損害賠償金(示談金)の増額が認められる可能性があるため、人身事故・物損事故を問わず、交通事故の示談交渉は弁護士にご相談ください。

5、まとめ

過失割合10対0の物損事故では、被害者が受けた物的損害の全額が損害賠償の対象となります。

具体的には、修理費用(買い替え費用)・代車費用・評価損・休車損害などが損害賠償の対象です。それ以外にも、交通事故と相当因果関係のある物的損害については、加害者側に対して損害賠償を請求できます。

被害者側にケガがないように思えても、後から身体が痛み始め、ケガをしていたことが発覚するケースが珍しくありません。通院が遅れると症状の悪化につながるほか、損害賠償請求に関しても不利益に働くおそれがあるため、必ず医療機関を受診してください
人身事故・物損事故を問わず、交通事故の損害賠償請求は弁護士へのご依頼をおすすめいたします。

ベリーベスト法律事務所は、物損事故の損害に加えて、人身事故に関する治療費・入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・逸失利益などの損害についても、加害者側から適正額の賠償を得られるようにサポートいたします。

当て逃げや追突などの被害に遭ってしまい、加害者に損害賠償を請求したいとお考えの方方は、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスにご相談ください。

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