交通事故慰謝料と示談金の違いや注意点を弁護士が解説
- 慰謝料・損害賠償
- 交通事故慰謝料
- 示談金
和歌山県警察が公表する「交通年鑑 令和3年版」によると、令和3年に和歌山市で発生した交通事故は672件で、死者は13人、傷者は766人でした。
和歌山市の交通事故件数は年々減少しているものの、事故に遭う可能性はゼロではありません。もし交通事故に遭ってしまったら、加害者に対して損害賠償請求を検討しましょう。慰謝料だけでなく、治療費などの積極損害や、休業損害・後遺障害逸失利益などの消極損害も損害賠償の対象です。
交通事故の加害者と示談をする場合には、「示談金」という名目で損害賠償が支払われることがあります。この場合も慰謝料だけに限定せず、被害者に生じたすべての損害を示談金に含めるように求めましょう。
本コラムでは、交通事故慰謝料・賠償金・示談金の違いや、交通事故の示談に関する注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故慰謝料・賠償金・示談金の違い
交通事故による慰謝料・賠償金・示談金は、いずれも被害者が加害者に請求する金銭ですが、それぞれ法的な性質が異なります。
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(1)交通事故慰謝料とは
慰謝料とは、不法行為などによって被害者が受けた精神的損害を補填する金銭です。
<3種類の交通事故慰謝料>- 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
交通事故によるケガを治療するため、入院や通院を強いられたことによる精神的損害を補填する慰謝料です。入院・通院の日数や期間に応じて金額が変動します。 - 後遺障害慰謝料
交通事故によるケガが完治せず、後遺症が残ったことによる精神的損害を補填する慰謝料です。損害保険料率算出機構が認定する「後遺障害等級」に応じて金額が変動します。 - 死亡慰謝料
交通事故によって死亡したことによる、被害者本人と遺族の精神的損害を補填する慰謝料です。家族における被害者の立場(支柱・配偶者・子どもなど)に応じて金額が変動します。
- 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
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(2)交通事故の賠償金とは
賠償金(損害賠償金)とは、不法行為などによって被害者が受けた損害を補填するため、加害者が支払い義務を負う金銭です。
交通事故の賠償金には、慰謝料に加えて積極損害と消極損害が含まれます。賠償金に含まれる具体的な損害項目については、2章で後述します。 -
(3)交通事故の示談金とは
示談金とは、法律トラブルの当事者間で、トラブル解決の証しとして合意(示談)に基づき授受される金銭です。
交通事故の損害賠償請求を行う際には、一般的に、まず早期解決を目指して示談交渉を行います。示談がまとまった場合には、加害者(または任意保険会社)と被害者の間で示談書を締結し、合意内容に従って示談金が支払われます。
示談金は実質的に賠償金と同義ですが、「示談により円満に解決した」という意味合いを込めて「示談金」と称されることが多いです。
2、交通事故被害者が受け取れる示談金に含まれるもの
交通事故の被害者は、示談交渉を通じて、加害者には慰謝料・積極損害・消極損害の支払いを請求することができます。加害者側との間で最終的に合意する示談金額には、被害者に生じたすべての損害を反映するように求めましょう。
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(1)慰謝料|精神的損害をカバー
前述のとおり、交通事故による精神的損害を補填する慰謝料は、入通院慰謝料(傷害慰謝料)・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類が認められます。
被害者の状況に応じて、以下の慰謝料を請求しましょう。- ケガが治って後遺症が残らなかった場合:入通院慰謝料
- ケガが完治せず後遺症が残った場合:入通院慰謝料と後遺障害慰謝料
- 死亡した場合:入通院慰謝料と死亡慰謝料
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(2)積極損害|実際の支出をカバー
積極損害とは、交通事故が原因で実際に被害者が支出した費用のことをいいます。
<積極損害として請求できるものの例>- 治療費
- 通院交通費
- 装具、器具購入費
- 入院雑費
- 介護費用
- 葬儀費用
- 車の修理費用、買い替え費用
積極損害には細かい項目がたくさんあるので、すべての損害項目を漏れなく把握・積算することが大切です。
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(3)消極損害|逸失利益をカバー
消極損害とは、本来であれば被害者が得られたはずなのに、交通事故によって失われてしまった利益のことをいいます。
<消極損害として請求できるものの代表例>- 休業損害
- 後遺障害逸失利益
- 死亡逸失利益
特に逸失利益は、被害者の収入や年齢などによっては、数千万円から数億円の高額となるケースもあります。弁護士のサポートを受けながら、加害者側に対して適正額の消極損害の賠償を請求しましょう。
3、交通事故の示談に関する注意点
加害者側との間で交通事故の示談交渉を行う際には、特に注意してもらいたい以下の4点について、ご紹介します。
- ① 警察に人身事故として報告する
- ② 医師の指示に従ってきちんと通院する
- ③ 加害者側が提示する示談金は不当な場合がある
- ④ 示談書を締結したら原則撤回できない
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(1)警察に人身事故として報告する
交通事故の損害賠償請求を行う際には、事故状況に関する客観的証拠を確保することが重要です。
事故状況を客観的に記録した資料として、警察官が作成する実況見分調書は非常に有用といえます。実況見分調書は、警察官が中立的な視点から作成するため、裁判でも高い信頼性が認められるからです。
警察官に実況見分調書を作成してもらうためには、人身事故として交通事故を報告しなければなりません。物損事故としての報告では、実況見分調書は作成されない点に注意が必要です。
ケガをしたことが明らかな場合はもちろん、後から身体が痛み出した場合にも、速やかに警察へ連絡して人身事故への切り替えを求めましょう。 -
(2)医師の指示に従ってきちんと通院する
交通事故について適正額の損害賠償を受けるためには、医師の指示に従ってきちんと通院することが大切です。
通院を中断してしまうと、交通事故の損害賠償請求に関して以下のようなデメリットが生じます。- ケガや後遺症と交通事故の間の因果関係を証明しにくくなる
- 通院日数が減るため、請求できる入通院慰謝料の金額が減る
また、ご自身の判断で通院を中断すると、ケガに対して適切な治療が施されず、結果的に後遺症が残る可能性が高まってしまいます。
適正額の損害賠償を獲得するだけでなく、できる限りケガの状態を改善するため、面倒であっても医師の指示に従ってきちんと通院しましょう。 -
(3)加害者側が提示する示談金は不当な場合がある
交通事故の示談交渉では、被害者側と加害者側が示談金額を提示し合い、交渉によって金額を調整します。
加害者が提示する示談金額は、法的に適正な水準に比べて著しく低額であるケースが多いです。そのため、被害者としては、加害者側から提示される示談金額を鵜呑みにしてはいけません。
交通事故の損害賠償額は本来、裁判例に基づき客観的な損害額を計算する「裁判所基準(弁護士基準)」によって算出するべきです。
弁護士は、裁判所基準による適正な損害賠償額を算出した上で、加害者側に対して全額の支払いを決然と請求いたします。加害者側から示談金の提示を受けた場合には、その金額が妥当であるかについて検証するため、お早めに弁護士までご相談ください。 -
(4)示談書を締結したら原則撤回できない
示談書を締結すると、錯誤取り消し(民法第95条)や詐欺取り消し(民法第96条)が認められる場合などを除き、原則として撤回することができません。
そのため、加害者側から提示された金額でそのまま示談するなど、納得できない条件で示談書を締結してしまうと、取り返しのつかない事態になることがあります。
適正な内容で示談書を締結するためには、弁護士のサポートを受けながら慎重に対応することがおすすめです。
4、交通事故の被害に遭ったら弁護士に相談を
交通事故の被害に遭った場合、早い段階で弁護士にご相談いただくことが、適正額の損害賠償を獲得するための近道です。
弁護士は、交通事故の状況や被害者の受傷状況などを分析し、加害者に対して適正な賠償額を請求できる損害項目をリストアップします。そして、法的な観点から各損害の客観的な金額を求め、その全額を加害者側に対して請求いたします。
示談交渉や訴訟など、実際の損害賠償請求の手続きについても、弁護士は全面的に代行することが可能です。弁護士にお任せいただくことで、被害者ご自身は治療に専念しつつ、適正額の損害賠償を受けられる可能性が高まります。
交通事故の損害賠償請求については、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
交通事故につき、被害者が加害者に対して請求できる示談金(賠償金)には、慰謝料だけでなくさまざまな損害が含まれます。適正額の損害賠償を請求したい場合は、弁護士にご相談ください。
弁護士は、交通事故に関する具体的な事情を分析した上で、慰謝料相場やその他の損害賠償の金額目安についてアドバイスいたします。実際の損害賠償請求の手続きも、弁護士にすべてお任せいただくことが可能です。
ベリーベスト法律事務所では、交通事故の慰謝料や示談金(賠償金)などに関するご相談を随時受け付けております。加害者側との間で示談交渉などを行うにあたり、経験豊富な弁護士に対応を一任したいとお考えの方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 和歌山オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています